保護者らにはPTA会費の用途についてきちんと説明してきた=神奈川県、米倉昭仁撮影

保護者への説明に努めてきた

 校長は「少数とはいえ、保護者に誤解を生じさせてしまったことは事実で、それについては学校として申しわけなく思っています」と、記者に語る。

 文書の存在を把握して以来、保護者たちへの説明に努めてきたという。

 新年度が始まる前には、「PTAに加入しません」と回答した保護者全員に「PTAに非加入でも子どもが差別的な扱いを受けることはない」と説明した。すると、保護者からの学校への問い合わせはやんだという。

 また、この文書は少数の保護者にしか渡されなかったため、大半の保護者はこうした問題を知らなかったという。年度が替わり、新しく就任したPTA現会長も5月になって初めて知ったという。

「差別の実態はない」

 5月上旬、ある新聞の記者が取材のため、学校を訪ねてきた。

 取材に応対したPTA現会長は、不適切な文書が一部に手渡されたことは認めつつ、差別の実態はないことをこう説明した。

「前会長も私(現会長)も、PTA非加入で子どもを差別するなんて、とんでもないことだと思っていますし、実際、そのようなことは行っていません」

 すでに新学期が始まり、新編成の登校班で児童が学校に通い始めていた。PTAに加入していない保護者の子どもも登校班に加わり、差別問題が生じていないことは「明らかだった」。取材者にも「真意は伝わった」と思った。

 掲載記事には「親がPTA非加入なら子どもを差別か」とあった。文書は保護者全員に配布されたようにも読めた。

炎上と学校への嫌がらせ

 文書自体のインパクトも大きかった。

 SNS経由で反響が瞬く間に広がり、学校への嫌がらせが始まった。「PTAに非加入で子どもに差別は是か非か」といった議論が巻き起こった。

 他の新聞社やテレビ局からの取材も相次いだ。なぜこのような文書が作られたかを問われると、会長も校長もこう説明した。

「前会長は『PTAの魅力を伝えたい』と言っていた。PTAに協力してほしい、ということを書こうとして、表現を誤ってしまったのではないか」

 学校へはさまざまな嫌がらせの電話がかかってきた。

臨時総会でPTAが入退会自由の任意団体であることを明確にする規約改正も行った=神奈川県、米倉昭仁撮影
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