「子どもたちに対して実際に差別が行われたかのように受け取れる報道もありました」と語る現PTA会長=神奈川県、米倉昭仁撮影

「地価が下がるじゃないか」

「差別をやめろ」「PTAがどうなっているか教えろ」「学校周辺の土地を買った者だが、地価が下がるじゃないか」

 電話対応に追われた担任が授業に遅れることもあった。電話口で名乗れば、その教員の名前がSNSに書き込まれた。通話が録音され、インターネット上に公開されたこともあったという。

 校長は言う。

「恐怖を感じて、一時は電話に出られない教員もいたほどでした。保護者ではなく、本校とは関係ない人からの電話でした。保護者の皆さんは、新聞やテレビの報道があった後も、温かく見守っていただきました。抗議や問い合わせはありませんでした」

入退会の自由を明確化

 最近になって、ようやく嫌がらせ電話は減ったが、インターネット上での嫌がらせは続いているという。

 学校のGoogleレビューには「星一つ」の評価がつけられ、SNSにはいまだに学校や校長への誹謗中傷が書き込まれている。

 PTAは6月18日、臨時総会を開催。これまでの報道の経緯を説明した。

「児童の安心安全を第一とし、差別なく公平平等に扱うことを規約の方針に明記し、説明しました」(会長)

 臨時総会でPTAが入退会自由の任意団体であることを明確にする規約改正も行った。

 これまで地区割・編成カードと兼ねていたPTAの入会届を分離するとともに、今後、改めて全保護者に対して入会の意思を確認する予定だという。

「PTA非加入で子どもを差別するなんて、とんでもないことだと思っています」と語る現PTA会長=神奈川県、米倉昭仁撮影

一方的な嫌がらせやめてほしい

 校長もPTA会長も、文書の存在を把握してから、保護者にも取材にも誠心誠意対応してきたつもりだ。その姿勢を、少なくとも保護者たちは十分理解してくれたと思う。だが、SNSに広がったインパクトを超えて、それを世の中に広く訴える手段はない。

 校長は疲弊した様子でこう語った。

「学校からもPTAからも、加入を強要することはないと何度も丁寧に伝えてきました。『差別』も事実無根です。一方的な嫌がらせはどうかやめてほしい」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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