報道をきっかけに嫌がらせが始まったという(写真はイメージです/gettyimages)
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 PTAにまつわるさまざまな議論があるなか、5月、「親がPTAに入らないと子どもを差別か」という衝撃的な報道があった。これをきっかけに始まった神奈川県内のある公立小学校への嫌がらせは、今も続いているという。

【写真】PTA活動で保護者への説明に努めてきた…現PTA会長は「嫌がらせはやめてほしい」と語る

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「嫌がらせは、まだ続いています」

 7月、現PTA会長は悔しさをにじませ、重い口を開いた。

「まるで実際に差別が行われたかのように受け取れる報道もありました。私たちが『実態は違います』といくら説明しても、コメントの一部だけが切り取られ、言い訳しているかのように使われることもありました」

 そう会長が言うと、隣に座る校長はうなずいた。

入学説明会のきっかけ

 発端は、「PTAご加入をご検討中の方へ」と書かれた文書だった。今年1月22日に開催された入学説明会で、一部の保護者に渡されたものだ。

 文面には、保護者がPTAに加入しない場合、その児童は、

①登校班に入ることができない。②防災備品や防犯用の笛などPTA会費で購入したものを受け取れない。③PTA主催の行事に参加することができない――。

 そう受け取れる記述があった。

正式な手続き踏まれていなかった

 この文書は、前年度のPTAが作ったもので、PTAが正式な手続きを経て保護者に渡したものではなく、学校もチェックしていなかった。

 学校では児童の登校について、PTAが登校班を編成し、集団登校を行っている。

 PTAは入学説明会で、登校班の編成に必須の「地区割・編成カード」を配布し、児童名や住所などを記入してもらった。地区割・編成カードはPTAの入会届を兼ねていたため、未提出だった10人ほどの保護者に、先の文書を渡したという。

 配布後、保護者から学校への問い合わせもあった。だが、学校がこの文書の存在や内容を把握していなかったことから、明確な回答がなく、対応する教員によって回答が違うという事態も起こったようだ。そうした学校の対応に不信感を抱いたせいか、市議会の記録からは保護者が市議会議員に訴えるケースもあったことがわかる。

保護者らにはPTAの活動内容についてきちんと説明してきた=神奈川県、米倉昭仁撮影
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