JR東日本:障害などがある子どもを育てる社員を支える制度について語るJR東日本人財戦略部の滝沢雅子人財育成ユニットマネージャー(左)と野平敏之健康経営・勤労ユニットマネージャー(写真:編集部・深澤友紀)

配慮なしの企業が8割超

 障害や疾患のある子を育てながら働くにはたくさんのハードルがある。だが、厚生労働省が昨年公表した調査によると、障害児等を育てる従業員に対して「特に配慮している事項はない」と答えた企業が8割を超える厳しい現状がある。約400人が参加する「障がい児及び医療的ケア児を育てる親の会」会長の工藤さほさん(51)は言う。

「平日日中に通院や療育の付き添いが必要な以外にも、保育園の預かり時間が制限されたり、放課後等デイサービスも利用時間が短かったり。障害の種類や程度もそれぞれ違うので、企業が個別の事情に耳を傾け、事情を抱えた社員が働き続けるための選択肢を整えてくださることは本当にありがたいです」

 工藤さん自身も、16歳の長女に知的な遅れを伴う自閉症があり、短時間勤務やフレックス勤務制度などを利用して働き続けてきたが、まもなく「18歳の壁」が待ち受けている。特別支援学校卒業後は放課後等デイサービスが利用できなくなり、長女は生活介護に通うにしても午後4時頃には帰宅する。一人での帰宅や留守番は難しいため、これまでのようには働けなくなる。

「18歳といえば、一般的には自立の年齢ですが、障害児は年齢を重ねるほど居場所が無くなり、家族の負担が大きくなるケースも少なくありません」(工藤さん)

 国もこうした実情を把握し、今年5月に成立した改正育児・介護休業法では、初めて障害児や医療的ケア児を育てながら働く親への配慮の視点が盛り込まれた。希望するときは短時間勤務制度や子の看護休暇の利用可能期間などを延長することを指針に示す予定だ。来年の施行を前に、一部の企業では取り組みが先行して進められている。

ウィンウィンの関係に

 特に、動きを牽引(けんいん)したのが産業別労働組合組織の電機連合(組合員約58万人)だ。

 22年に作成した「障がい者支援ガイドライン~誰もがいきいきと働き暮らす共生社会の実現に向けて~」に、障害者雇用だけでなく、障害児・者をもつ家族への両立支援の視点を初めて盛り込んだところ、当事者からの声が届くようになり、24年の春闘の要求事項の一つとして「障がい児・医療的ケア児等をもつ家族に対して個別事情に配慮した取り組み」を掲げた。その結果として、日立製作所やNEC、富士通ら約40社が制度を新設・拡充するなど取り組みが進んだ。電機連合中央執行委員の出口直哉さんはこう話す。

「『個別事情に配慮した取り組み』とは具体的にどうすればいいのか、という問い合わせもいただいていますが、先行している労使の取り組みを共有し、波及していければと考えています」

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