障害や医療的ケアが必要な子を育てながら働くには、多くのはハードルがある。事情を抱える社員の両立を支援するため、独自の両立支援制度の導入する企業も増えてきた。AERA 2024年9月23日号より。
【図を見る】「障害児育児と仕事の両立を支援する主な企業」はこちら
* * *
障害や医療的ケアの必要がある子どもの親になった瞬間、人生は一変する。通院や療育の付き添いで頻繁に仕事を休まなければならず、この先仕事が続けられるかさえわからない。一方で、福祉用具の製作や療育などの出費も多い上、自立の難しい我が子の「親亡き後」に備え、働き続けたいと考える人も少なくない。
そんななか、家族に障害があるなど事情を抱える社員のために、独自の両立支援制度を導入する企業が少しずつ増えている。
JR東日本では今年4月、障害などがある子を育てる社員が、子の年齢にかかわらず短時間勤務などを選べるよう支援制度を拡大した。小学3年生までの子どもの養育のために月5日まで取れる養育休暇も、難病や障害がある子の場合は年齢制限をなくした。
こうした支援制度がセーフティーネット(命綱)となり、働き続けられている社員もいる。
園の預かり時間に制限
同社に勤務する40代の女性社員は、ダウン症とてんかんによる知的障害がある6歳の子どもがいる。歩行は可能だが身の回りのことは介助が必要で、女性は子どもが3歳になるまでは育休を取得。仕事復帰後は保育園に子どもを預けたが、障害があるため、預かり時間が午後4時半までと制限があり、フルタイムでは働けなかった。介護目的の短時間勤務の制度を使ったが、それも最大で3年まで。女性は、「もう退職するしかない」と考えていたという。そのタイミングで制度が拡充した。
「これまでと変わらず、家庭と仕事の両立を続けられることに喜びを感じています。将来に向けて貯蓄ができる点において、不安要素が減りました」(女性)
同社人財戦略部人財育成ユニットの滝沢雅子マネージャーによると、社内では普段から積極的に意見交換する場を設けていて、今回の拡充は社員から上がった声を反映したものだという。
「環境を整えることによって、社員がいきいきと働き続けることは企業にとっても大変喜ばしいことです。社員とご家族の幸福を実現するため、社員のニーズにしっかりフィットしていくことが大切だと考えています」