本連載の書籍化第5弾!『鴻上尚史のおっとどっこいほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんのこたえ】

 アマデウスさん。大変でしたね。子供が親よりも先に亡くなるのは、本当につらいことでしょう。それが自死だと、苦しみも複雑になると思います。

 ですから、勝手な推測ですが、アマデウスさんが嫁や孫、いろんな人と距離を取ろうとするのは、分かるような気が僕にはします。

 ただ、相談の文章を読んで、少し気になることがあります。

 間違っていたらごめんなさい。

 アマデウスさんは、ずっと「不器用な長男」のことを心配し、気にかけていたんですよね。ところが、大丈夫と思って二の次にしていた次男を、自死で失ってしまったのですよね。

 つらかったでしょう。でも、「不器用な長男の事の方が気がかりでしたが、次男を亡くしてから長男に全く興味が持てなくなりました」という文章は、僕には、とても唐突に感じます。「次男を亡くしたこと」と「長男に全く興味が持てなくなったこと」のつながりがよく分からないのです。

 ひょっとしたら、アマデウスさんは、もっと次男を気にかけていればよかったと、自分を責めたんじゃないですか。

 そして、以前と同じように長男を大切にすることは、次男に申し訳ないと思うようになったんじゃないですか。

 だから、「次男の悲しみが癒えないのに結婚式などにも引っ張りだされ、非常に嫌」だと感じたんじゃないですか。そこでニコニコしていたら、死んだ次男に申し訳なさすぎるし、喜ぶ自分も許せないと感じたんじゃないですか。

 その感覚が、次男の死後、7年間、ずっと続いているんじゃないですか。

 すみません。僕の勝手な臆測ですが、もう少し聞いて下さい。

暮らしとモノ班 for promotion
「昭和レトロ」に続いて熱視線!「平成レトロ」ってなに?「昭和レトロ」との違いは?
次のページ