夏の甲子園では県立校の大社(島根)がベスト8に進出して大きな話題となったが、同じ県立校で強さを発揮しそうなのが菰野(三重)だ。甲子園出場は春1回、夏3回とそこまで多くはないが、今年夏は初勝利もあげた。その強みは何と言っても投手育成にある。これまでも西勇輝(阪神)、田中法彦(元広島・現セガサミー)など毎年のように好投手を輩出しており、岡林勇希(中日)も高校時代は最速150キロを超える本格派として話題となっていた。
1人の投手に負担をかけず、複数の投手を上手く起用しながら戦う運用が確立されており、そのやり方を知って進学する投手も多いという。夏の甲子園でも栄田人逢(2年)が南陽工(山口)を相手に見事なピッチングを見せてチームを勝利に導いた。また今年のチームはレギュラー全員が2年生であり、甲子園を経験したことは大きなプラスである。秋以降、東海地区を牽引していく可能性はありそうだ。
他では菰野と同じく投手育成に定評のある報徳学園(兵庫)、霞ヶ浦(茨城)、さらにセンバツ優勝の健大高崎(群馬)などももちろん有力なチームとなるだろう。ただ長打が出ないからといって、極端なスモールベースボールになってしまうと、その先のカテゴリーで苦労する選手が増え、日本の野球界全体のレベルが下がることに繋がる危険性もある。そういう意味でも、新基準の金属バットでも打撃を売りにするチームが出てくることも期待したい。(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。