創志学園の門馬敬治監督
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 今年の高校野球最大のトピックと言えば新基準の金属バットの導入だろう。選手の安全面を考慮し、従来のバットよりも反発力が低く、芯も小さくなったと言われており、その影響もあって長打が激減。甲子園大会のホームラン数は春は3本(うちランニングホームラン1本)、夏は7本と金属バットが採用されてから最少の数字となった。

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 長打、ホームランが減るとより重要になってくるのは守備力と投手力だ。また攻撃面では機動力が使えることもポイントとなる。夏の甲子園優勝の京都国際(京都)、準優勝の関東第一(東東京)はまさにそれを体現したチームの代表例だったと言えそうだ。ではこの2チーム以外に新基準の金属バットで秋以降に強さを発揮するチームはあるのだろうか。これまでの戦いぶり、チームカラーなどから探ってみたいと思う。

 まず真っ先に名前が挙がるのが明徳義塾(高知)だ。毎年守備については徹底的に鍛えられている印象が強く、今年もショートの山畑真南斗(3年)がその守備力の高さを買われてU18侍ジャパンに選出されている。夏の高知大会でも4試合で失策は3記録しているが、そのうち2つは捕手によるもので、内野と外野の失策はわずかに1だった。

 攻撃面でも小技と機動力を駆使した野球が特徴で、夏の甲子園では初戦の鳥取城北(鳥取)戦で10安打、3犠打で7点を奪って快勝。続く3回戦では関東第一を相手にチャンスを生かしきれずに敗れたが、2対3と接戦を演じている。新チームも制球力の高い左腕の池崎安侍朗(2年)と、入学直後から正捕手に定着した里山楓馬(1年)のバッテリーが残っているのは大きなアドバンテージである。馬淵史郎監督も2002年夏以来となる甲子園制覇に意欲を見せており、その手堅い野球でまた頂点を奪う可能性はありそうだ。

 続いて強さを発揮しそうなチームとなると創志学園(岡山)の名前が挙がる。東海大相模で春3回、夏1回の優勝を成し遂げた門馬敬治監督が2022年8月に就任。昨年秋の中国大会では準優勝を果たし、今年春のセンバツでも1勝をあげた。門馬監督の野球の特徴は負けに繋がる確率をいかに減らすかという点で、守備ではカバーリングやバックアップ、攻撃では走塁への意識の高さが徹底されている印象が強い。

 春のセンバツ初戦の別海(北北海道)との試合でも4盗塁を決めて7点を奪い、守ってもノーエラーという見事な戦いぶりだった。今年のチームのレギュラーは3年生が中心だったが、ベンチ入りメンバーは2年生も多く、入学した時から門馬監督の指導を受けているという点でも、そのイズムが浸透してくる可能性は高い。近年の中国地区は広陵(広島)が完全な王者となっている印象が強いが、肩を並べる存在となることも十分に期待できるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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