共働きでも妻の負担大
OECD(経済協力開発機構)が20年にまとめたデータによれば、家事・育児などの無償労働時間について、日本の女性は1日当たり224分で、男性の41分の実に5.5倍に上る。ジェンダー平等が進む北欧のノルウェー、スウェーデンが1.3倍、米国は1.7倍、日本に最も近いのが韓国の4.4倍であり、各国との違いが歴然としているのが分かるだろう。
また、21年時点で、6歳未満の子どもを持つ夫婦の家事関連時間を調べた総務省「社会生活基本調査」によると、共働き家庭であっても、家事・育児のしわ寄せは妻に向かっている不平等な実態が明らかになっている。
どうしてなのだろうか。
ひとつ目の背景として、男性が長時間労働から抜け出せない現状がある。法政大学大学院の石山恒貴教授は、日本的雇用慣行では、無限定総合職(労働時間や勤務地、職種が限定されない総合職)と標準労働者、マッチョイズムの「3点セット」が暗黙の規範になっていると指摘。規範を受け入れるために、家事・育児よりも仕事を最優先する姿勢が求められてきた上、3点セットを満たす人だけが出世競争に参加できると説明する。
新たな景色が見えた
次に挙げられるのは、日本社会に根強く残る硬直的で固定的な性別役割分業意識だ。1997年を境に、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回る状況が続いている。そうした中でも、以前の「男は仕事、女は家事・育児」ではないにせよ、「男は仕事、女は仕事と家事・育児」という古色蒼然としたジェンダー規範が横たわっているのが実情だろう。これら二つが絡み合って、男性優位社会が今も続いているのが令和・ニッポンの実態なのである。
(ジャーナリスト・小西一禎)
※AERA 2024年8月26日号より抜粋