あるドラマで、紺色のランドセルを手にした女の子が「お母さんが選んだの?」と聞かれて「私に選ばせてくれた」と答える場面がありました。そういうことなんですよね photo iStock.com/mamahoohooba

 親は人生経験が長い分、プロセスを端折って結果に早く近づく方法を知っているので、「理由」の部分を端的に答えてもらえると思いがちですが、そもそもその「理由」に行き着くには背景の構造を理解する必要があり、それには自己認識が必要になってきます。人生経験が少ない子どもたちは、「自己認識」が十分ではなく、何か嫌なことがあっても、それは何が原因で、その結果なぜ今自分がこのように嫌なのだろうという背景の構造を理解できてない可能性があります。だから、大人が「なんで?」と理由を聞いても、言語化がうまくできずに黙ってしまったり、その場しのぎの言葉を発してしまったり、何度も同じ質問をされて「別に」「特にない」と答えるようになっているのではないかと私は考えています。

 自己認識できるようになることばかけについては、この連載の第5回目でお話した「二者択一」のところをご覧いただくとヒントになると思います。ことばかけを変えていくことで、子どもの心をほぐして、気持ちとことばを引き出して、受け止めてあげることで、心が育っていくのです。

 子どもは大人が思っている以上にいろんなことをちゃんと考えています。学校現場で中高生の話を聞いていると、お母さん、お父さんに心配をかけまいと遠慮したり、悲しませたくないと自分の気持ちを我慢したり。だからこそ、「あなたにはあなたの意見があるんだから、その考えを言ってもいいんだよ」「失敗することもあるかもしれないけど、それも人生経験!大丈夫!」「失敗は経験値のアップだね」と声をかけ、少しずつ親のコントロールを弱めていって、子ども自身に舵取りをさせる機会を増やしていくことが、子離れの第一歩になるのではないかと思います。

 さて、相談者のお子さんですが、ことばかけを変えてみたところ、塾がしんどい、勉強についていけないから困っている、と徐々に話してくれるようになり、その意思を尊重して中学受験をやめることを決断しました。塾もやめ、好きな絵を描く時間をたっぷり取れるようになりました。食事のご指導もさせていただき、住環境も整えたところ、すっかり気持ちが緩んで私とオンラインで会話もできるまでになり、6年生の終わり頃には少しずつ登校できるようになりました。卒業式にも出席できて、地元の中学校に進学し、部活にも入って楽しい日々を生活を送っているとご報告をいただいています。

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子どもと親はまったく別の人生を送る