経験がないわけですから、これは仕方のないことですし、本来は「受験をやめる」という選択肢は、最初から念頭に置いておくべですよね。でも、多くの親御さんは、「自分がやるって言って始めたんだから、最後までやりなさい」「途中で投げるなんてよくない」と言ってしまうのです。

 これは、他の多くの習い事にも当てはまります。「やめぐせがつく」「逃げぐせがつく」と言って本人が言い出した習い事をなかなかやめさせない親御さん、多いんじゃないかと思います。

 ここで、よく考えてみてください。習い事であれ塾であれ、子どもが自分から「やってみたい」ということ自体に「主体性」があります。これ、「ほめポイント1」です。そして、実際に体験してみて、「自分には合わないな」と自分で感じることができ(「ほめポイント2」)、やめるという決断を自ら下すことができ(「ほめポイント3」)、親に自分から「やめたい」と言える(ほめポイント4」)。ここまでに、ほめるべきポイントが4つもあるのですから、このプロセスを受け入れてあげるといいのではないかと私は思います。

「自分でやろうと思ったのってすごいよね」
「自分の気持ちに気づけてよかったね」
「自分の気持ちを大事にできたね」
「やめたいっていう自分の気持ちを言うのって勇気いったよね」

 こんな言葉と共に「気持ちを伝えてくれてありがとう」と、子どもの主体性とプロセスの部分にフォーカスした言葉かけをしてみると、子どもは「親は自分の気持ちを受け入れてくれた」「自分のことを信じてくれている」と、信頼感も安心感も増していきます。すると、自分にも価値を感じ、自己を確立できて、自己肯定感が育っていきます。これが結果的に、自立の道、親離れへとつながっていくのです。

 こういうときに、親が「この子は自分の気持ちを自分で理解して、意思を持って伝えてくれるようになったな、成長しているな」と思えるか、「まだまだ危なっかしいから私がしっかりとコントロールしなくては」と考えるかで、ここから先はだいぶ変わってきます。

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自分で選び取るということができなくなる