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 日本の働き手不足が危険水域に達している。地方だけでなく、都心の生活インフラにも影響が出始めている。もはや「働き手」欠乏症ともいえる状況に瀕している。特効薬はあるのだろうか。AERA 2024年7月29日号より。

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 10月から24時間営業をやめる予定という首都圏の50代のコンビニオーナーに話を聞いた。アルバイトの採用が難しくなる中、勤務経験の長い社員待遇の店員の離職を防ぐのが狙いだという。

「24時間営業で得られる利益を失っても、社員の働き方を見直し、働き手を安定的に確保することを優先させたほうが、結果的に長く経営を持続できると判断しました」(オーナー)

 特に厳しいのは、週末や夜勤の担い手になる学生アルバイトの確保。そもそも応募に来る学生が少ない。面接に来ても「土日は休みたい」と勤務条件を逆提示される。採用してもすぐにやめてしまう。

「人と接するのが苦手というか……。レジなどでお客様からちょっと強めに何か言われると、すぐにやめてしまいます。コロナ禍で中学時代をマスクで過ごした子たちが、高校に入ってアルバイトで接客しようとしてもかなり厳しい気がします」(同)

 店舗で雇用している4人の社員は20~30代。10月以降は午前5時~午後11時の営業にシフトする。

「この営業時間であれば社員が夜勤に入らなくて済みます。社員にはコンビニで働きながら、結婚子育てもできる、と思ってもらいたい。それには1日8時間を超える時間外労働を減らして有給休暇もとれる態勢にしたい、と思ったのが時短営業に踏み切る理由です」(同)

 数時間の勤務に入ってもらうスポットワーカーの募集も試みたが、人材の当たりはずれの幅が大きく、当日数時間前にキャンセルする人もいるなど、安心して任せるにはほど遠いのを実感した。チェーン本部も表向きは時短営業には柔軟に応じる姿勢を見せるが、本音では24時間営業を続けさせたい意向がにじむという。「24時間営業をやめるとこれだけ利益が減ります」と本部が提示したデータには、時短分の人件費削減が反映されていなかった。「このデータはおかしい」と指摘すると、バツが悪そうに引っ込めた。時短営業を思いとどまらせるため、作為的なデータを提示したとしか受け取れなかった、とオーナーは憤慨する。

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