ファミリーレストランと言えば、かつては24時間営業の代名詞のような存在だった。それで思わず、出口付近にいた大学生の男女のグループに「ファミレスが午後10時に閉店するのって早いと思いませんか?」と尋ねてみた。1人は「渋谷にしては早いかな」と反応したが、他のメンバーからは「でも居酒屋じゃないから」「ファミレスだから仕方がない」といった意見が続いた。驚いた。それでつい、50代の筆者はこのファミリーレストランがもともと24時間営業だったことを伝え、「かつてのファミレスは終電に乗り遅れた時に始発までドリンクバーで粘れるところ、というイメージだった」とこぼすと、一斉に「えーそれ知らなかった」「ファミレスにそれ(24時間営業)を求めていなかった」と逆に驚かれてしまった。
ライフスタイルや価値観の変化とともに、企業のサービスに対する消費者の意識も着実に変化している。
消費者ニーズとも合致
リクルートワークスが22年に20~60代を対象に実施した「企業のサービス」に対する考え方の調査結果が興味深い。料理の味が十分おいしい前提で、飲食店の具体的なサービス内容の事例を挙げ、それによって次回の来店をやめることにつながるかを問う調査だ。
その結果、「飲み水やお茶、飲み物はセルフサービス」で90.3%、「配膳はロボットやベルトコンベアなどのシステム」で85.3%、「注文はオンライン」で75.3%、「店員の『おもてなし』はなし(気遣いなし、愛想なし)」で53.4%が、それぞれ「来店をやめることにつながらない」や「気にならない」「むしろそのシステムの方が良い」と肯定的な回答をした。
また、コンビニの営業時間について「24時間営業である必要があると思いますか」との質問に、「必要ない」が7割近くに上った。24時間営業が必要ではないと回答した人が希望する開店時間の1位は「午前6時」(36.2%)。午前5~7時で全体の8割強を占めた。希望する閉店時間の1位は「24時」(33.6%)で、22~24時が全体の8割近くだった。
コンビニやファミレスの「脱24時間営業」の動きは、働き手のみならず、消費者のニーズや意識とも合致している可能性がある。構造的な働き手不足と、企業サービスの過剰感や公的機関の過重負担をどう捉え、持続可能な形にバランスを図っていくか。これからの日本社会を考える上で不可避の課題の一つといえそうだ。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2024年7月29日号より抜粋