3大会連続で五輪に出場する池江璃花子。個人種目では女子100mバタフライで派遣標準記録も突破し、2大会ぶりの代表に=2024年3月18日の競泳・五輪代表選考会

 ただ、「このままじゃダメだ」「環境を変えたい」と考え、以前お世話になったこともあるオーストラリアのチームで練習をさせていただくことにしたんです。日本から離れた環境で、現地のコーチやスタッフ、仲間たちと、これまでと異なった練習方法に慣れようと努力する過程で結果的に、私は心も体も変わりました。

——一緒に練習する仲間たちにはメダリストや世界記録保持者もいる。しかも練習はかなりハードだ。当初は取り残されている感じもあったという。

 コーチやスタッフの意識がとても高く、最初はこの人たちに付いていけるのかと不安でした。その頃は自分に自信がなかったので「良かった」と言われても「どこが?」と思っていたんですけど、質問するとコーチやスタッフが具体的なことを挙げ、ロジカルに説明してくれる。そうすると自分でも納得できるし、徐々に自信が芽生えてくるんです。コーチや周りの人たちが私の気持ちをグングン引き上げてくれました。

チーム仲間からの刺激

 コーチに言われました、以前は闘う人の顔じゃなかった、弱気な表情をしていたって。自分でもオーストラリアに来てから変わったと思いますね。日本にいたら絶対に自分に甘えていたと思うし、闘う表情にはなっていなかったかも。

 オーストラリアでは選手たちが自分自身に厳しく、目指す目標値も高い。たくさん刺激をもらいました。世界のトップまでどうやってたどり着いたか、世界記録を出すまでにどんな努力をしたか、あるいは練習している時や試合で意識していることは何かとか。普段の何げない会話から、モチベーションにつながるような話を聞けたのは本当に良かった。私も病気になる前に常に世界を意識していた記憶が蘇り、その頃の表情を取り戻せたのかなと思いますね。だからこそ、念願だった個人種目でのパリ行きを決められたかなと。

——3月の代表選考会の会場に池江が登場したとき、ひと回りもふた回りも大きくなった体つきに驚いた人も少なくなかっただろう。ハードなトレーニングに加え、食事も変化したという。

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