3月のパリ五輪代表選考会で女子100m自由形で優勝した池江璃花子

 食事も意識して多く食べるようになりました。練習がきついので、たくさん食べないと体がもたないんですよ。バランスの取れた食事を提供していただいていますが、時には自分で材料を買って作ることもあります。

 練習が終わり、家に帰ってシャワーを浴び、夕食を済ませるともう何もしたくない。でも、そんな自分にムチ打って、英語の勉強だけは毎日やっています。

結果出す難しさ感じる

——白血病という重篤な病を克服し、個人種目で五輪に出場するという快挙は、金メダルや世界記録以上に人々に与えるインパクトは大きい。それでも、トップアスリートの顔に戻った池江は、今の状況に決して満足していない。

 東京五輪は、これまで戦ってきた選手たちと、もう一回戦える場所に戻れたっていうことがすごくうれしかった。でも戻るだけで満足はしていません。

 高校生の時は、「今日は日本記録を出す」と言ったら絶対に出すことができたんですけど、今はどんなに頑張っても結果が出ないことがほとんどなので、結果を出す難しさをひしひしと感じていますね。

 世界ランク1位の時に病気になり、奈落の底に突き落とされましたけど、退院したときはまだ速かった頃の感覚が残っていたので、5年あればメダルを獲れると考え、(2019年12月に退院したときにホームページで)「パリ五輪出場、メダル獲得という目標で頑張っていきたい」と書いたんです。でも現実はそう簡単じゃない。メダルを獲る難しさ以上に、体を戻していくこと、タイムを縮めていくことがこんなに大変なことだとは思ってもいませんでした。

 それでも一念発起してオーストラリアに来たことによって、レース感覚が磨かれた。泳ぎの技術は悪くないし、練習できつくなった時でもフォームを崩さない練習をかなりやってきているので、これに感覚がカチッとはまれば、パリオリンピックでも納得のいくタイムが出せるような気がします。目標は、16歳で出場したリオデジャネイロ五輪の自分超えです。

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