口には出さなくても、親の思いは子どもに伝わってしまいます。しかも、ネガティブな気持ちほど、伝わりやすいような気がします photo iStock.com/spukkato

 こんなことを伝え続けたのです。このときは、私自身も心の底からそう思っていましたので、迷いなく言い切れました。不登校に対する視点が変わり、子どもに対する視点も変わる。だんだんと、私自身も迷いや不安がなくなっていきました。近所でママ友に会っても「あ、うちの子は学校、一旦辞めて、通信制の高校に通ってるよ〜」と明るく話せるようなったんです。

 そして、わが家に泊まった全盲の男性のように、家族以外の人と関わると、家の中に新しい風が吹き込むんだと知った私は、その後、自分で立ち上げた団体の仕事の打ち合わせも自宅でやるようにしました。いろいろな大人たちが、家にやってきては新しい風を持ち込んでくれて、時には長男も輪に加わったり、私が「今日はこういう人が来て、こういう話をしたんだよね」と伝えたりしていました。

「不登校になったからこそ、こういう時間が持てるし、学校に普通に通っていたら得られない情報を得られるのはラッキーなことだよね」。長男にも堂々と、こう伝えていました。以前の私とは、180度変わったのです。

 私が悲壮感を漂わせたり、ため息ばかりついていたり、ということがなくなり、明るさを取り戻すと、長男の表情もほぐれてきました。親も子も、ガチガチに固まっていた気持ちが少しづつ解けていったのだと思います。親子って、不思議ですね。子どもは親の写し鏡で、親の代わりに気持ちを表現してくれているかのような存在なんだと学びました。

 私はこの経験があったからこそ、次男や長女の不登校のときは、早い段階で気持ちを切り替えることができたのです。不登校って、悪くない。子どもも、若いうちに挫折を経験し、それを乗り越えることで心の筋肉が鍛えられます。

 目の前で起きていること自体は変わらなくても、自分の視点が変われば道は必ず開けてきます。不登校のお子さんをお持ちの親御さんはいろいろな悩みや不安があると思いますが、そんな時こそ是非、視点を変えてみてください。

 次回は7月30日配信。「不登校は子離れする良い機会」というテーマでお話しさせていただきます。

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村上 好

村上 好

むらかみ・よし/オカンの駆け込み寺代表、JAMネットワーク代表、「ことばキャンプ」認定講師、「まなびのば」代表、ひきこもり不登校支援人材協会認定相談指導員、聖学院中学校高等学校教育相談支援員、中医学養生士、食養生コーディネーター。大手私鉄会社で旅行業、ホテルの営業などを経験後、国際会議運営会社でAPECなど国際会議運営に携わり世界中の人々とかかわるうちに日本の教育のあり方に疑問を持つようになり、自身の子どもが通う学校でPTA改革に着手。2015年に教育団体「まなびのば」を立ち上げる。その後、長男が不登校になった際に出合った「ことばキャンプ」に感銘を受け、このプログラムを提供するNPO法人JAMネットワークの講師を経て2024年代表に就任。2019年からは、中高一貫校で教育相談支援員として不登校のサポートに従事。また不登校を「ことば」「食事」「住環境」の観点からサポートするオカンの駆け込み寺を開設し、不登校解決の支援や講演活動をしている。

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