成澤俊輔さんは徐々に視力を失う難病で、視覚障害による孤独感や挫折感から大学在学中に引きこもりを経験。就労困難者の就労を支援し雇用を創造をするNPOなどで活動し、現在は約60社の経営者に伴走中

 不登校の出口が見えそうで見えない。そんな焦りとまた向き合う日々が続き、一歩進めば「ああ、よかった」と実際以上に喜び、ちょっとうまくいかないと「一歩進んだ分どころか、三歩くらい下がったんじゃないか」と落ち込むという、一喜一憂の日々でした。

 そんな私を見て、また長男はその影響を受けるんですよね。私がいろいろなことに敏感になると、長男までもが敏感になり、「またできなかった」「また迷惑かけちゃった」「また心配かけちゃった」と必要以上に重く受け止めてしまう。私自身も、「余計なことをしたかも」と必要以上に心配して、それがまた伝わるという負の連鎖が起きていたのだと思います。

 当時の私は務めていた会社を辞め、就労移行支援事業所のFDA(NPO法人Future Dream Achievement)のボランティアに参加していました。長男も将来お世話になるかもしれないと思った私は、実際に活動に参加して、そこを利用している人たちがどのような生活を送っているのか、自分の目で確かめたかったのです。

 当時、その団体の代表理事を務めていたのが「世界一明るい視覚障害者」として活動している成澤俊輔さんでした。ある時、成澤さんに「村上さんの息子さん、引きこもってますよね?ちょっとお願いがあるんだけど」と声を掛けられました。「全盲のビジネスパートナーが東京に出張に行くから泊めてもらえない?彼も、7年間引きこもっていたんだよ。なにか、息子さんのお役に立てるかもしれないよ」というのです。「え?7年も?うちの息子の数カ月なんてまだまだですね」と答えると、「そうそう、あははは〜。じゃあよろしく」……。そんな明るい成澤さんに、断る理由はありません。

 結局、そのパートナーの方に1週間、わが家に泊まっていただきました。最初、長男は人に対する苦手意識が大きすぎて会おうともしませんでしたが、私は彼に長男の様子をいろいろと話しました。2日目くらいだったと思います。夕飯のときに「村上さん、昼夜逆転ってなんで起こるか知ってますか?」と聞かれたんです。「さあ、夜ダラダラしてるから朝起きられないんじゃないんですかね?」と答えると、こんなふうに教えてくれたんです。

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「しんどかったんだね」