大学でしかとれない授業を通信制大学で受講
修士2年のとき、本髙さんはもう一つの挑戦をしている。
「通信制大学を受講し始めました。学部生時代に仕事の関係で取れなかった単位を取りたかったんですが、大学院生は基本的に学部の授業を受けられないし、単位もとれないんですよ」
自分の大学で取れないなら、別の通信制大学で取ろうと決意した。
「決めたのは修士1年目の終わりだったので、『いまからでも申し込める通信制大学はどこだ?』と大急ぎで探して、その日のうちに申し込みました」
科目等履修生として、必要な科目を受講することにした本髙さん。オンライン授業を受け、レポートを提出し、試験を受ける日々が始まった。
「授業の動画はオンデマンドで見られるんですが、ためちゃうと本当に大変。メイク中や移動時間に動画を見たり、要点を整理したりしました。通信制だから余裕だと思ったんですが、甘くはなかったです」
大学院と通信制大学で学びながら、アイドルとして歌って踊って楽器演奏もする。ミュージカルの舞台に立ち、NHKの番組にレギュラー出演していた時期とも重なっている。さぞかし多忙だったと思うが「ぼくは本来怠け者なので、いろいろとやる方が気持ちが引き締まって。自分を律するためでもありますね」と軽やかに笑う。
自分のしたいことを見極め、驚くべき瞬発力で行動に移す本髙さん。その先に目指すものは何なのか。
「一生、エンタメにはかかわっていきたいですね。本来エンタメって、すべての人が平等かつ適正に楽しむことができるものであるべきだと思うんです。どうすれば理想に近づけるか、これからも考えていきたいと思います」
アイドルと理工学研究者。本髙さんはこれからも、その両方のまなざしで世界を見続けていく。
本髙克樹(もとだか・かつき)/1998年生まれ、東京都出身。2011年より所属事務所に入所し、2018年より「7 MEN 侍」のメンバーに。歌とバンド演奏によるライブ活動のほか、舞台出演、クイズ番組や教養番組などのテレビ出演でも活躍。
(文/神 素子)
※AERAムック『大学院・通信制大学2025』より