福岡県・糸島の音楽フェスをエンジョイする、35歳の鈴木さん

「選ばなかったもう一つの道」への未練

 働かないでたとえば家庭に入るという生き方がいまだに受け入れられにくい男性に比べて、あるいは妊娠出産の機会のない男性に比べても、女の生き得る道は多様だと思います。女が社長になる道に憧れるか、社長夫人になる道に憧れるか、は好みとしてけっこう拮抗しているのに対して、社長の配偶者になることに憧れる男というのはかなり稀少なケースではないでしょうか。

 多様であるということは何かしら選ばなくてはいけないということでもあります。あまり意識していない幼い頃から私たちは、社長よりの生き方か、社長夫人よりの生き方か、あるいはまったく別の何かっぽい生き方か、とにかく未来のことより今の快楽を重視した生き方か、ちょっとした選択を繰り返しているように思います。そして小さな選択の連続の先に、大人になった私たちがいる限り、自分が選ばなかった、もう一つの道への未練、憧れ、後悔、などなどがあるのは必然です。

 私は常々、男より女のモテは複雑だなぁと思うのですが、どちらかといえば高学歴で高収入の方がモテるであろう男に対して、女の場合、尊敬される選択肢とモテる選択肢が時折真逆であることもあるわけです。国立大の院を出て新聞記者になった私や私の同期たちはしばしばご立派ですねとは言われますが、モテ指数としては女子大を出てパラリーガルや航空会社のクルーになった友人の足元にも及びません。

 以前、『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』という本を出した時、人生のいくつかのポイントで、真逆の、あるいは対になるような、あるいは拮抗する選択をした女性たちの悩みや自尊心、複雑な幸福感などに向き合いました。

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ
うらやましいのは当たり前