今は、業界全体として、小説を書いてお金をもらっているということ、あるいは小説を書いてもらってお金を渡しているのだということをタブー視する必要はないんじゃないか、と思います。話をいただいた順に小説を発表すべしという慣習も疑問です。義理人情が第一、みたいな。作家だって生活がかかっているんだから、原稿料を見て仕事するという人がいたっていいんじゃないかな。

 そもそも、作家と編集者という関係は本当にクローズドなんです。だから編集者に作家が無理難題を言われてしまったり、逆に編集者が作家からパワハラを受けてしまったりという話も聞く……。私が言いたいのは、「CCに上司を入れて送れないメールを、作家も編集者も送るな」ということですね(笑)。

三宅:そういう明文化されていない知見を共有する場があればいいのに、と思いませんか。

佐原:同じ新人作家でも労働環境が違いすぎて共有できないんですよね……。私の場合は文芸誌の新人賞でデビューしたわけではないから、「三作はこの文芸誌で発表しなくてはいけない」という“三作縛り”がなかったので、“三作縛り”のある人とは環境が違った。私の場合は、右も左も分からないうちにお付き合いだけが増えて、6月にデビューして9月には6~7社とやり取りしていたので、もうメールのやり取りだけで忙殺されてしまっていた。一方、“三作縛り”のある方は、この三作だけで終わってしまうんじゃないか、この担当編集者とは仕事しても未来がないんじゃないか、でも他社への行き方も分からない、という恐怖があると聞いたことがあります。

 縦の繋がりも少ないけれど、横の繋がりも少ない。だから、何が普通で何がおかしいのかが分からないんですよね。

三宅:最後に、新たにデビューされた作家の方々に伝えたいことを伺えますか。

佐原:思ったよりも同業の方って優しい、ということは言いたいですね。私の知る限りでは足の引っ張り合いなんてない。先輩作家さんは先輩作家さんで、新人作家がじたばたしているときに声をかけたいけれど、声をかけたら圧になっちゃうかもしれないと躊躇ったりしていることもある。だから臆さずに相談してほしいなと思います。

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