法律の解説と見過ごしやすい性的手なずけ(性的グルーミング)などの性暴力の実態を通して読者が気づかされるのは、性的行為における同意の意味だ。私たちはいつ、どこで、誰と、どのような性的関係を持つかを決める性的自己決定権を持つ。しかし、意思や感情がないがしろにされ、性的なモノのように扱われた望まない性的行為は、性暴力になる。

「トラウマやPTSDの調査をすると、圧倒的に多いのが、性暴力の被害です。それも子どもだったり、子ども時代に守られなかったりしたケースが珍しくありません。性暴力は日常の延長にあります。性的行為での同意の大切さを理解すると、自分に起きたことに気づいたり、知らずに加害者になったりすることを防ぐきっかけになります。性暴力をなくすには、法律を変えるだけでなく、社会で暮らす誰もが身近な問題として関心を持ち、認識を深める必要があります。そうなれば、子どもたちがもっと守られると思うのです」

 齋藤さんの元には親や教師から、子どもが性被害に遭ったときの対応の質問も多く寄せられる。「相手の気持ちや意思を尊重し、『話してくれてよかった』と伝えてほしい」と、アドバイスが書かれた部分は、性別や年齢を問わず、性暴力に遭った身近な人を受け止める側の支えになる。

「優しい言葉で書いたつもりですが、性暴力の本を読むのはドキドキするし、緊張すると思います。つらくなったら本から離れ、温かいお茶を飲んだり、ぬいぐるみを抱きしめたり、気持ちが落ち着くようなことをしてみてください。自然な気持ちを否定せず、そのままにして、なぜ自分は、モヤモヤするのかな、腑に落ちないのかな、と考えていただければいいなと思います」

(ライター・角田奈穂子)

AERA 2024年4月15日号

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