AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
『性暴力についてかんがえるために』は、性暴力問題の基本が学べる入門書。2017年と23年の性犯罪における法改正の解説と共に、暴力と気づきにくい「性的手なずけ」、性暴力における「抵抗」、二次的被害が絶えない「相談することの難しさ」、性暴力の被害者に何ができるか、などのポイントが押さえられている。柔らかな文章を読み進めると、知識不足が生む性暴力への誤解が解け、自分の問題として感じられてくる。著者の齋藤梓さんに同書にかける思いを聞いた。
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長い間、目の前にあったのに、なかったかのように、あるいは見ないようにしてきた社会問題と向き合わざるを得ないことが増えている。性暴力は、その最たるものだろう。
本書は性暴力に関心を抱き始めた人も理解しやすいように書かれた入門書だ。著者の齋藤梓さんは心理学が専門の上智大学准教授。教鞭を執りながら、臨床心理士、公認心理師として、PTSDの治療効果研究、殺人・性暴力等の被害者らの精神的ケアやトラウマ焦点化認知行動療法に取り組んでいる。2017年と23年に性犯罪の刑法が改正されたときの検討会メンバーでもある。
齋藤さんは、執筆した動機をこう話す。
「以前から被害者支援や法律の専門職向けに、性暴力の実態を伝える書籍や雑誌記事を書いてきました。でも、性犯罪の扱いが大きく変わった2回の法改正は、専門家だけでなく、一般の方も知らないと改正した意味がありません。何が変わり、改正後も何が問題として残ったのかをわかりやすく、かみ砕いて伝える必要があると思ったのです」