娘さんは、受験校に受かったら、独り暮らしを希望していないですか? 一刻も早く、はるさんから離れたいと思ってないでしょうか?

 それでいいと思います。娘さんと距離を取り、ゆっくりと娘さんが冷静になる時期を待つことです。娘さんが接触を求めるまでは、待ちましょう。

 娘さんが話しかけてきたら、今までみたいに「手をあげ」ないで、「酷い言葉をぶつけ」ないで、「怒鳴りつけ」ないで、私の話より「娘の話を聞く」ようにして下さい。

 やがて、娘さんがはるさんと話したいと思う日が来るかもしれません。

 はるさん。はるさんが14年前に離婚して、余裕をなくし、娘さんを追い込んでしまったのなら、最低でも14年かけて娘さんとの関係を取り戻そうとすればいいと僕は思います。

 最低でも14年です。多感な時期の14年ですから、ひょっとしたらその倍の28年かかるかもしれません。

 でも、そのためには、はるさんが「娘さんに対してしたこと」をしっかりと見つめることだと思います。

 はるさん。希望はあると、僕は思います。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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