フランシス・フクヤマ氏

 ですから、この両国は潜在的なライバルなのです。政治システムも大きく異なります。インドは、反リベラルな方向に舵を切ったとはいえ民主主義国家です。一方の中国は、独裁国家です。

 われわれが目にするのは、多極的な世界です。現在の米国は、1989年から2008年の20年間のような覇権を世界に及ぼす存在ではなくなりました。しかし、巨大な存在であることは間違いありません。欧州も、同様に存在感があります。日本と韓国も主要なプレーヤーです。ですが、力は分散されるでしょう。今後直面する課題ごとに、異なる同盟関係が形成されていくことでしょう。

 たとえば、バイデン大統領は独裁国のベトナムを訪問しました。ベトナムは、反中国でもあります。地政学的な狙いがあるので、その方向に外交政策を進めているのでしょう。

 東アジアで、日本は民主主義とリベラルな価値を守る、いかりのような存在です。2022年の時点では世界3位の経済大国ですし、重要なプレーヤーです。興味深いと思うのは、1990年代はじめにバブルが崩壊して、「日本はピークを過ぎた」と多くの人が感じましたが、ここ数年、好調を維持しています。経済は再び成長しています。

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