Handicraft Worksの「ワイルドパレット」は一杯1560円と「1000円の壁」を大きく超える。そのおいしさに多くの客が日夜訪れている(筆者撮影)
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 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。今回は埼玉の塩ラーメンの名店「麺屋 扇 SEN」の店主・伊藤さんの愛する名店「Handicraft Works(ハンディクラフト ワークス)」をご紹介する。

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■目の前に広がった「ラーメンドリーム」

 つくばエクスプレス・八潮駅の南口から徒歩20分。住宅街に一軒のオシャレなラーメン店がある。「Handicraft Works」だ。2017年にオープンした人気店で、上に豪快なシュラスコが乗った油そば「ワイルドパレット」が唯一無二の一杯と話題になっている。

Handicraft Works/埼玉県八潮市伊勢野111-1、昼11:30〜14:25 夜17:30〜19:20営業、月曜日定休(筆者撮影)

 店主の鶴岡祐介さんは千葉県我孫子市出身。中学のときに成田市に移り、成田園芸高校(現在の成田西陵高校)に通った。当時周りは「不良」ばかりで、鶴岡さんはそのなかでも成績が飛び抜けて悪かった。成績が悪すぎて不良に相手にもされない毎日だったという。

 昔から料理が好きだったこともあり、高校卒業後は武蔵野調理師専門学校に入学する。

「子どもの頃に母にオムライスを作ったら『おいしい』と言ってくれて、それが忘れられず、将来は自分のお店を持ちたいと思っていました」(鶴岡さん)

Handicraft Worksの店主・鶴岡祐介さん(筆者撮影)

 卒業後は東京・目白にある「揚子江」で上海料理を学んだ。その頃、ふと入った池袋の「光麺」の熟成とんこつラーメンを食べて衝撃を受ける。あまりの衝撃に、すぐに「社員募集してませんか?」と電話し、本店に配属される。2001年、23歳の時だった。

「まさに全盛期で1日1000杯ぐらい出ていて、明け方5時まで行列ができていました。社長の田中さんがとにかくカッコよくて、私のイメージしていたラーメン屋さんとは違うなと思いました。ラーメンドリームを目の前で見ている気分でした」(鶴岡さん)

 寸胴8本で炊いているスープを取りつかれたようにずっと濾す毎日。時には“ラーメンの神様”として知られる「東池袋大勝軒」の山岸一雄さんも食べに来るぐらいの人気店だった。ラーメンはこれからもっと時代を作っていくと鶴岡さんは確信した。

筆者撮影

「光麺」で4年間働いた後、28歳で上板橋にある「蒙古タンメン中本」の本店へ移った。二代目の白根誠さんに交代した頃で、日曜日だけ先代が味作りに来ていた。「中本」はとにかく熱狂的なファンが多く、鶴岡さんは震えながらラーメンを作っていた。ファン作りの極意を目の当たりにする毎日だったという。

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