なお、休職後の復職先は原職(元の職場、元の地位)が原則となっています。しかし、パワハラや適応障害など、元の職場に休職の直接の原因がある場合は、配置先の変更が検討されます。

「正確なデータはありませんが、私の経験では1割弱くらいは異動しています」(川村医師)

「不安は記憶と強く結びついているので、職場で嫌な体験をした場合、同じ職場に戻るだけで不安は高まるので再発のリスクを高めてしまいます。適応障害にしても、無理に仕事に人を合わせようとするよりも、適材適所で柔軟に配置転換を考えてもらうのも良いのではないでしょうか」(田中医師)

認知行動療法は健康な人のメンタルへルスケアにも役立つ

 再発防止策のかなめと言われる「リワーク・プログラム」はどのようなものでしょうか。リワーク・プログラムは専門家による「職場復帰支援制度」のことで、多くの心の病気の再発予防に有効です。

 プログラムの内容は主に通勤練習、模擬作業(もの作りやパソコンを使った集計・文書作成など)、医師など専門家による講義の受講、カウンセリング、グループワークなどで、平均期間は3~6カ月。都道府県の「障害者職業センター」(無料)や、精神科や心療内科のクリニック(保険診療)のほか、会社が従業員向けにおこなっているもの、民間の就労移行支援事業所がおこなっているものなどがあります。

「リワーク・プログラムをおこなう施設に連日通うことが、通勤練習にもなります。また、施設で一定の時間を過ごすことが体力を取り戻すことにもつながります。カウンセリングをもう一歩進めた、認知行動療法、ソーシャル・スキル・トレーニング(以下、SST)を受けることも有効な再発防止策につながります」(川村医師)

 心の病気になりやすい人は、「自責感が強い」「一つのよくないことがあると、それについて考え続けてしまう」「日々の生活をすべてネガティブに考える」など、認知に偏りがある場合が少なくありません。

 認知行動療法はストレスに直面したときに、自分の「認知」と「行動」のくせを変えて、気持ちが落ち込まないようにする精神療法です。SSTはロールプレイングなどで上手な対人関係を身につけるための訓練です。

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『柳に風』のような心のしなやかさを身につける