回復のスピードは一人ひとり異なります。復職の条件として川村医師は、①症状の消失、②気力・体力の充実、③再発防止対策への取り組み、の三つを挙げます。

 ①の症状の消失は、不眠や食欲不振などの病気による症状がなくなることです。②の気力・体力の充実は、「散歩を毎日している」「スポーツを始めた」「家事を毎日やっている」など、能動的な行動ができていること。③の再発防止策は復職へ向けた「リワーク・プログラム(後述)」などが相当します。川村医師によれば、とくに大切なのは③の再発防止策です。

「再発防止対策に取り組んでいないと、いったんよくなっても、復職後に同じことが起きるおそれがあります。再休職となるとご本人の自信喪失にもつながるので、避けたいところです」(川村医師)

 復職許可の診断はまず、主治医がおこないます。主治医の診断書をもとに職場の産業医が本人に面談をし、会社に報告。この結果をふまえて、会社が復職許可を出します。ただし、主治医が復職可能としていても、冒頭のケースのように産業医が「時期尚早」と判断する場合もあります。

「主治医の任務は病気を治すことですが、産業医は職場で健康を損なわずに業務をしてもらうことが仕事であり、診ている視点が違うためです。実際、主治医から復職可能の診断が出ていても産業医の立場から『このまま復職したら危険だな』と思われるケースがときどきあります。収入のことなどもあり、ご本人の早く復職したいという気持ちはわかりますが、焦ってはいけません。無理をして復職した結果、うつ病を再発し、自殺してしまったケースが実際に報告されています」(同)

 田中医師は、「周囲のサポートも重要」だと言います。

「復職の条件を満たしていても、再発することはあります。逆に『大丈夫かな』と思うケースでも、周囲の協力によって復職がスムーズにいくことも少なくありません。本人の回復の程度とともに、職場でのサポートや理解がどれだけ得られるかも再発のリスクを左右する大きな要因となります」(田中医師)

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