TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽や映画、演劇とともに社会を語る連載「RADIO PA PA」。今回は劇作家・長塚圭史の新作「三浦半島の人魚姫」「箱根山の美女と野獣」について。

KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト第二弾『箱根山の美女と野獣』『三浦半島の人魚姫』
前列左から片岡正二郎、四戸由香、後列左から菅原永二、柿崎麻莉子、長塚圭史(撮影:宮川舞子)
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 民俗学者・柳田国男は東北・岩手に伝わる民話や風習、妖怪ものをまとめて『遠野物語』を著したが、劇作家・長塚圭史は現代の神奈川を舞台に「人魚姫」「美女と野獣」を仕立て直し、それぞれ「三浦半島の人魚姫」「箱根山の美女と野獣」という新たなタイトルで一挙2本上演という快挙を成し遂げた。

「三浦半島の人魚姫」は相模原市で洋食店をなりわいにする夫婦が軸になる。

 ある日、妻が姿を消し、途方に暮れる夫が江の島にたどり着き、爬虫類を研究する男に囁かれる。

「奥さんは人魚を探しているらしい……」

 解説には「人魚を求めて、妻は家を出た」とあった。

 一方「箱根山の美女と野獣」では、箱根山神山に棲むヘビのもとへ嫁に行ったウラ若き女性カベコの愛らしく誠実な心遣いに、乱暴者だったヘビが改心するストーリー。こちらの解説には「素朴を愛する女性と、美しき野獣の物語」。

 KAATカナガワ・ツアー・プロジェクトと銘打たれたこの演目は横浜・KAATで上演後、座間、川崎、小田原、逗子、茅ケ崎を巡演。

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