それにしても、神奈川という地域で伝承される神話や自然のなんと豊かなことか。諏訪明神、鮭神社、有鹿神社、五頭龍、蛙の滝、海南神社、市杵島姫、アルカヒコノミコト……。神奈川芸術劇場芸術監督でもある長塚は徹底的に神社や風習、神話を調べ上げていた。音楽は阿部海太郎、振り付けは柿崎麻莉子。
人情あり、涙あり、笑いありの舞台は原始の魅力にあふれていた。
神話とダンス、そしてそこかしこのユーモア。洒脱なセリフとインディ・ジョーンズみたいな冒険譚。山と山の移動には孫悟空のごとく雲の絨毯で一足飛びするところでは、自分も風の力でどこまでもスイスイ行きたくなった。
地産地消は食生活の言葉だが、地元・神奈川の物語を地元で楽しむ「地産地消演劇」とでもいおうか、その醍醐味に「演者と一緒に子どもとなってずっと神奈川で遊んでいたい。東京出身の僕だけど、なんだか羨ましいよ」と盟友・長塚圭史にLINEをしてしまった。
(文・延江 浩)
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