KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト第二弾『箱根山の美女と野獣』『三浦半島の人魚姫』
左から柿崎麻莉子、片岡正二郎、菅原永二、長塚圭史、四戸由香(撮影:宮川舞子)

 それにしても、神奈川という地域で伝承される神話や自然のなんと豊かなことか。諏訪明神、鮭神社、有鹿神社、五頭龍、蛙の滝、海南神社、市杵島姫、アルカヒコノミコト……。神奈川芸術劇場芸術監督でもある長塚は徹底的に神社や風習、神話を調べ上げていた。音楽は阿部海太郎、振り付けは柿崎麻莉子。

 人情あり、涙あり、笑いありの舞台は原始の魅力にあふれていた。

 神話とダンス、そしてそこかしこのユーモア。洒脱なセリフとインディ・ジョーンズみたいな冒険譚。山と山の移動には孫悟空のごとく雲の絨毯で一足飛びするところでは、自分も風の力でどこまでもスイスイ行きたくなった。

KAATカナガワ・ツアー・プロジェクト第二弾『箱根山の美女と野獣』『三浦半島の人魚姫』
左から柿崎麻莉子、四戸由香(撮影:宮川舞子)

 地産地消は食生活の言葉だが、地元・神奈川の物語を地元で楽しむ「地産地消演劇」とでもいおうか、その醍醐味に「演者と一緒に子どもとなってずっと神奈川で遊んでいたい。東京出身の僕だけど、なんだか羨ましいよ」と盟友・長塚圭史にLINEをしてしまった。

(文・延江 浩)

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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