各地の鉄道網が自然災害で大きな打撃を受けている。特に地方のローカル線は、そのまま廃線になることが多い一方、11年ぶりに災害から復活した秘境路線もある。復活の切り札となった「上下分離方式」とは何か。AERA 2024年2月26日号より。
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災害から復活するローカル線も少なくない。
福島県と新潟県を結び、秘境路線として知られるJR東日本の只見線(会津若松-小出、全長約135キロ)。11年の豪雨でこのうち会津川口(福島県金山町)-只見(同只見町)間の約28キロで3カ所の橋脚が流失し不通となり、バスによる代行運転が続いてきた。それが22年10月、11年ぶりに全長約135キロが再開した。
復活のカギとなったのが、「上下分離方式」だ。車両の運行を「上」、線路や駅舎など施設の保有・管理を「下」に例え、上はJRなど鉄道会社が行い、下は自治体が引き受ける。線路や鉄道施設などの維持管理がなくなる分、鉄道会社の経営負担が軽くなる。鉄道をインフラと考える欧州では一般的だ。
当初、JR東は、赤字がかさむ只見線の被災区間の廃線を提案した。だが、県や沿線自治体は鉄路の存続を主張。内堀雅雄福島県知事は「県が最大限努力する」とし、JR東の路線では初めて上下分離方式を導入した。
この手法は只見線以外にも、茨城県ひたちなか市を走る第三セクター、ひたちなか海浜鉄道が導入して経営を立て直すなど鉄道再生の「切り札」として各地で広がりつつある。
ただ、ネックもある。自治体にとって多額の負担が重荷となる。岩手県の達増拓也知事は一昨年の定例会見で、ローカル線の存続について「採算が取れないからとJRから外し地方に委ねるのは話が違う」と批判した。
「上中下分離方式」
北海道教育大学の武田准教授は、自治体の負担を軽くするため「上下分離」ならぬ、「上中下分離方式」を提唱する。「上」の鉄道運行は鉄道事業者が行うのは同じだが、「下」を二つに分け、「中」として車両の保有を地元の自治体が担い、「下」の線路や施設を国が引き受ける。