「鉄道は交通インフラとして公共性が極めて高い乗り物。そこで、国にも関与してもらおうとする考えです」(武田准教授)
また「軌道法」の活用も有効だという。軌道法は路面電車に適用される法律で、道路用地にレールを引いて走らせることができる。そうすれば、災害復旧時に巨額の道路予算を鉄道のインフラ部分に回すことが可能となる。実際、大阪を中心に走る阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道などは、軌道法に基づく「軌道」として設立された。
「もはや、道路をつくればみんな幸せという時代ではありません。鉄軌道を道路施設の一部として国のインフラとして扱うなど、柔軟な対応を取ることが必要です」(同)
一方、災害から復旧後も課題は残る。
「赤字ローカル線は、多額の税金をかけて復活させる以上、それ以上の価値を見いだすものを生み出していく必要があります」
地域交通政策に詳しい福島大学の吉田樹(いつき)准教授(交通政策)は、そう指摘する。
存在意義つくれるか
例えば只見線の場合、毎年3億円とされる施設維持管理費は、県と会津17市町村が負担することになる。さらに、只見線は冬場の運休率は約10%なのに対し、代行バスは1%いくかいかないか。インバウンド効果も限定的だ。それでも地元の人が、「鉄道を復活させてよかった」と思える存在意義をつくれるかどうかが問われる、という。
そのための手段として、吉田准教授が注目するのが「駅」だ。鉄道にできてバスにできないことの一つが、駅の活用だと言う。
「駅とそのすぐ周辺に、行政手続きができる出張所や図書館、地元産の野菜や総菜の販売所など、生活者が集まる場所をつくれるかが大切です。そして、駅の存在感を高める取り組みが、沿線にあるいくつかの駅で連鎖すると、鉄道が普段使いしてもらえる可能性が高まる。災害から復旧した鉄道の存続は、こうした施策ができるか否かにかかっています」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年2月26日号より抜粋