がんと共に生きる時代になってきた。副作用対策が整った病院を選ぶことも大切だ(写真:gettyimages)

 日本人の死因第1位のがん。だが、治療は日進月歩で、完治しなくても長く生きられる時代になってきた。その一翼を担うがん免疫療法の「現在地と未来」について、がん研究会有明病院の北野滋久・先端医療開発科部長に聞いた。AERA 2024年2月12日号より。

【図表】日本で承認されている免疫チェックポイント阻害薬はこちら

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──がん免疫療法は、2018年の本庶佑(ほんじょたすく)・京都大学特別教授らのノーベル生理学・医学賞受賞で、脚光を浴びました。どんな治療法なのでしょう。

北野滋久(以下、北野):患者さんが備えている免疫(免疫細胞)の力を活性化して、がん細胞を攻撃する治療法です。がん細胞は、自分を体内から排除しようとする免疫細胞に、「私を攻撃するな」という信号を送ります。免疫細胞が信号を受け取ると、攻撃にブレーキがかかってしまいます。そこで、「免疫チェックポイント阻害薬(阻害剤)」という薬でブレーキを外すのです。

QOL保って長生きも

──どういう患者さんに行われるのでしょうか。

北野:主な対象は、手術後にがんが再発したり、がんが見つかったときには全身に転移していたりする患者さんです。以前は治療が難しかったステージの患者さんが、免疫療法で長く生きられるケースもみられます。すべての種類のがんに効くわけではありませんが、肺がん、胃がん、食道がんなど治療できるがんが増えてきました。

──日本では、8種類の免疫チェックポイント阻害薬が国に承認され、保険診療の対象になっています(表参照)。どのように使われているのでしょうか。

北野:現在は、免疫チェックポイント阻害薬同士を2種類組み合わせたり、阻害薬と既存の抗がん剤などを組み合わせたりして使う併用療法が主流です。

──どの程度の効果が出ているのでしょうか。

北野:がんの種類にもよりますが、半数前後の人に効きます。そのうち数%から2、3割の人は、長期間効果が続きます。

──「効果がある」とは?

北野:CTなどの画像診断で、がんが見えなくなったり(完全奏効。目に見えないがんが残っている可能性はある)、3割以上縮小(部分奏効)したりする状態です。縮小しなくても、大きくならずに安定していれば、生活の質(QOL)を保って過ごせます。がんと共存できれば、効果があると言えるでしょう。

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