AERA 2024年2月12日号

──再発や進行がん以外の患者さんにも使われますか。

北野:最近は、早期発見で手術を受けた患者さんの再発予防に使うケースも出てきています。手術でがん細胞を取り除いても、検査で捉えられない小さながんが残っていて、再発することがあります。小さながんを根絶するために免疫チェックポイント阻害薬を投与するのです。抗がん剤を入れる、もしくは、経過観察と比べると、再発を防げる人の割合が、がんの種類にもよりますが、5~10%上乗せされると期待できます。

副作用対策を重視して

──副作用も気になります。

北野:がん免疫療法では、本人の免疫細胞ががん細胞を攻撃するので、従来の抗がん剤と比べると副作用は比較的軽いとみられます。治療開始から半年ぐらいを乗り越えると、副作用が落ち着くことが多いようです。ただ、免疫が活性化しすぎて暴走し、間質性肺炎、心筋炎など重篤な副作用が出ることもあります。個人差が大きく、いつどこにどんな副作用が出るかも読めません。特に感染症を併発もしくは疑われる際は、呼吸困難などの症状が出るサイトカイン放出症候群を生じてしまう可能性があるため、阻害薬を休薬したほうが良いと考えられます。

──がん研有明病院では、どう対応していますか。

北野:あらゆる副作用に対応するために、救急、膠原病や循環器などがん以外を専門とする医師も参加する「免疫支援チーム」を作っています。患者さんは、副作用対策が整った病院を選ぶことが大切だと思います。

──ブレーキを外す仕組み以外の免疫療法は何がありますか。

北野:「CAR-T細胞療法」です。「キムリア」という薬が承認されています。患者さんの血液から免疫細胞を取り出し、人工的に攻撃力を高めた「キメラ抗原受容体」という特殊なたんぱく質を組み入れ、点滴で戻します。「CAR」は、このたんぱく質の頭文字です。

──どのがんが対象ですか。

北野:白血病や悪性リンパ腫など血液のがんです。従来の治療が効かなくなった患者さんが対象で、50~80%の人に効き、3~4割の人で持続しています。今はまだ、肺がんなど「固形がん」には使えませんが、類似の療法も含め、世界中で研究が進められています。

次のページ