勝俣範之(かつまた・のりゆき)/1963年生まれ。富山医科薬科大学医学部卒。国立がん研究センターなどを経て、2011年、日本医大武蔵小杉病院に赴任(撮影/中村智志)

「自由診療」かどうか、がん情報の見分け方

勝俣範之・日本医大武蔵小杉病院腫瘍内科部長に聞く

 ネットには、特に免疫療法で効果が期待できない治療の情報があふれています。そういう治療を行うクリニックのサイトでは大抵、どんながんにも効く、副作用がほとんどない、などと謳っています(どちらも違います)。そして免疫療法の解説や医師の立派な経歴、患者の成功体験が載っていたりします。

 見分け方は、一つ。費用が「自由診療」かどうか。

 自由診療とは保険が利かない診療のこと。全額自己負担です。しかし、本当に効果がある治療なら、国が承認して保険適用になっています。自由診療を受けたばかりに有効な治療を受ける機会を逃し、がんが進んでしまったという例もあります。かつて広まった「がん放置療法」も同様です。

 新薬の候補がマウスの実験や臨床試験を経て薬として実用化される確率は1万分の1ぐらいでしょう。承認された治療法を「標準治療」といいます。「標準=並」と思うかもしれませんが超狭き門を通過した「最高の治療」です。標準治療をしっかり受けましょう。

 書籍やネット等で闘病記を読む際も注意が必要です。仮にがんが治ったと書かれていても、治療法は参考にしないでください。一個人の体験のエビデンスは限りなく低いのです。

 がんは生活習慣病と言われますが、誤解を与える表現です。食事やサプリ、糖質制限等では治りません。サプリは時に有害です。がんは偶発的な要因で発症することも多く、生活習慣が悪かったと自分や家族を責めるのはやめましょう。

(朝日新聞社パブリックエディター事務局・中村智志)

AERA 2024年2月12日号