とはいえ、わかっていてもなかなかできないのが人間です。こういう場合の解決方法としてよく言われるのは、「冷静になって考える」とか「俯瞰して見る」というものです。しかし、それがうまくできるのは、利害が絡まないことに限定されます。自分に関することはどうしても見方が甘くなるので、「他人の視点」を素直に受け入れて、上手に活用するのも一つの手だと思いました。

 それでなくても世の中の多くのことは、一つの視点ですべてを把握できるほど単純ではありません。対象を正確に把握するには、大まかでもいいから全体像をつかんだり、いろいろな角度から多角的に見たりすることが必要です。

 この場合にとくに重要になるのは視点です。同じものを観察していても、人によって見えるものが異なることはよくあります。それはものの見方には個人差があるからです。それから人間には「見たいものが見える」「見たくないものは見えない」という性質があるので、一つの視点にこだわりすぎるのは失敗の原因にもなります。

 これまで数多くの失敗事例に触れてわかったのは、大きな失敗には必ず予兆、すなわち危険を知らせるサインがあることです。ところが、見たくないものが見えない人は、このサインを受け取ることができません。そして、潜んでいる危険に気付くことができずに、あるとき落とし穴に落ちます。これがよくある大失敗のパターンです。

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場合によっては老害もあり