
ドキュメンタリー番組「情熱大陸」の28日放送回は、ファッションデザイナーの小泉智貴さんのこれまでに迫った。歌手のMISIAさんが東京五輪の開会式にまとったカラフルなグラデーションのフリルのドレスは記憶に残っている人も多いだろう。AERAは2022年に「現代の肖像」で小泉さんを取り上げていた。小泉さんの服作りの原点や哲学とは?(2022年3月5日に配信した、AERA2022年3月7日号からの抜粋記事に加筆・編集しました。年齢、肩書等は当時)。
【写真】今では小泉さんの仕事を支えるパートナーになった妹さんと
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ドレスデザイナー、小泉智貴。子どもの頃からファッションが好きで、自分で洋服を作っていた。ジョン・ガリアーノを雑誌で見て、その世界観にあこがれた。自分らしいデザインを模索していく中、ラッフルドレスにたどり着く。世界的なスタイリストの目に留まり、NYで初のコレクション。一夜にして世界で注目されるようになった小泉智貴。希望をくれたドレスで、世界に希望を届けたいと願いを込める。
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晴れやかな顔でリンクに立つ、北京五輪フィギュアスケート男子銀メダリストの鍵山優真。エキシビションでは、MISIAの「明日へ」の調べに乗って優美に銀盤を舞う。その衣装をデザインしたのは、ドレスデザイナーの小泉智貴(33)だ。
スポーツの衣装は極限のパフォーマンスを求められるものなので、ドレスとは違う難しさがあり、制限が多い中での作業は勉強になったと振り返る。
「楽曲の『明日へ』には雪解けを待つ春への思いがあり、自然の芽が力強く生まれる瞬間をイメージして、空と草木を白と水色と緑のフリルで表現しました。鍵山さんはすごく若いし、黒のカッコいい衣装が多いので変化をつけたくて。ちょっと可愛い感じで舞台映えする衣装になったかなと」
気どりない笑顔で話す小泉は、物腰も柔らかだ。
小泉が作るフリルをたくさん使ったカラフルなラッフルドレスは国内外で人気が高い。YUKIや加藤ミリヤ、ドリカムの吉田美和などがステージで着ており、海外ではレディー・ガガやビョークなどのアーティストから支持される。ニューヨーク・メトロポリタン美術館のパーマネントコレクションに選ばれたり、マーク ジェイコブスやエミリオ・プッチとコラボしたり、小泉はむしろ海外での知名度の方が高い。
小泉のドレスが世界中の目にとまったのは、2021年7月23日、東京オリンピックの開会式だ。淡雪のようにフリルをちりばめた白いラッフルドレスをまとい、MISIAは国歌を朗々と歌いあげた。ふわりと広がるラインは多彩なグラデーションをなし、虹のように舞台で浮かびあがる。
「ひと目見て、純粋に美しいと思えるもの。世界中の人たちの目にふれるので、優しさと強さをもつピュアで美しいドレスを作りたかったんです」