何に困っているか、気持ちや考えを整理する
認知症の親の介護が始まると、夜眠れない、食事をきちんととれない、仕事を続けられない、受験期の子どもの世話が十分にできない、家族の時間がもてない、夫婦関係にひびが入る、いっときたりとも息が抜けないなど、困りごとは一つや二つではなく、大波のようにいくつも押し寄せてきます。無理な介護は、あなたの生活のリズムや生活習慣をおびやかします。それはつまり、生活習慣の積み重ねで成り立っている生活を、さらには生活の積み重ねである人生を変えてしまう可能性があるということです。
私は、「大事な親だけれど、もう大切にできない」と感じたら、介護職に頼ってもいい、頼るべきだと思います。我慢して介護を続けることは、親への虐待につながる可能性もあります。疲れ果てたぎりぎりの状態になる前に、私たちに相談してほしいです。
介護職に依頼するときに、何で困っているのか、どの部分を介護職に任せたいか、介護を託すことで何を守りたいのかなど、本当の気持ちを話すと、あなたは自分が整理できて楽になります。
「もうだめ、限界」と思っているとき、あなたの心ではさまざまな感情や考えがうずまいて、混乱している状態です。介護サービスを依頼するために気持ちや感情、思考を整理して、順序をもって説明を組み立てることで、過剰な責任感や使命感、「親を見捨てるのでは」という罪悪感も軽減されるはずです。
認知症でも介護サービスを利用して在宅も可能
親が家で暮らすことを希望すれば、認知症の有無にかかわらず、ヘルパーや訪問看護、デイサービス、ショートステイなどを上手に組み合わせて、可能な限り自宅で生活することができます。あなたが親と同居していて、あなたの生活習慣がおびやかされているのなら、親を家に残してあなたが別居してあげるという選択肢もあり得ます。
いまでも少なくないのが、離れて暮らす子どもが、「何かあってもすぐにかけつけられないし、不安だから」という、自分たちの不安解消目的で、親を施設に入居させるケースです。親が施設入居を望んでいた場合は別ですが、そうでないなら、介護サービスを利用しながら、親も子どもも、これまでと変わらない生活を維持する方向で考えて、まずは実行してほしいと思います。