永遠に居心地悪いまま
そうした雰囲気は、育休や時短勤務の制度が整っている企業でも同じだ。大手総合商社のコーポレート部門で部長を務める40代の女性は、
「自分自身のキャリアに納得はしているけれど、会社の本流は営業。そこに女性が登用されることが少ないことにモヤモヤしている。とはいえ、営業本部長をやってみろと言われたら、できないんですけどね」
と話す。社内では、目立ちすぎる女性が煙たがられ、本人の希望と力量に見合わない部署に配置換えとなるケースも見聞きするという。女性は言う。
「多様な視点、感性が大切だということに経営陣が気づかない限り、私たちは永遠に居心地が悪いままでしょうね」
この“居心地の悪さ”を「ガラスの崖(がけ)」と表現するのは、ベネッセコーポレーションのインキュベーション部長、白井あれいさん(43)だ。
大学卒業後、厚生労働省に入り、その後、大手コンサルティング会社・マッキンゼーへ。英国留学後に資生堂で管理職となり、20年にベネッセに入社した。2人の子どもを育てながら、キャリアを積み重ねてきたが、
「女性は、ガラスの崖に立たされているような感覚があって、怖い。何かあった時に守ってくれる人がいないことを感じています」
とこぼす。さまざまな組織で働いてきたが、常に上からの期待のかけられ方が男女で違うことを感じてきたといい、
「男性は男性上司から『いつか管理職になる人』としての薫陶(くんとう)を受けている印象があった。女性だからやらせない仕事、女性だからやらせる役割が常にありました」(白井さん)
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2024年1月15日号より抜粋