節度ある適度な飲酒は1日平均純アルコールで20g程度。ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合、チューハイ(7%)なら350mL缶1本、ウイスキーならダブル1杯(写真:Getty Images)

 体に良くないとわかっていても、つい飲み過ぎてしまう人は少なくないだろう。酒好きにとって、健康管理はアルコールとの付き合い方が鍵を握ると言っても過言ではない。アルコールによる健康リスクとは何か。自分自身の遺伝子のタイプに応じた適量はどれくらいか。アンチエイジングクリニックを開院した医師・満尾正氏の新著『ハーバードが教える 最高の長寿食』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。

【表】あなたのお酒の飲み方、大丈夫?

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酒と上手に付き合う

「酒は百薬の長」と言われますが、はたして本当でしょうか。過去の研究では「適量の飲酒は心筋梗塞など心疾患を減らす」ということが指摘されていますし、適量の飲酒は認知機能のサポートにもつながるのではないかという研究もあります。

 これらは酒飲みの人にとってはうれしい情報ですが、飲み始めてしまうと適量なのか大量なのかわからなくなるというのが悩みのタネでもあるでしょう。

 一方、アルコールにはリスクもあります。短時間に大量の飲酒をすることで血液中のアルコール濃度が急上昇して脳に影響を与える「急性アルコール中毒」や、慢性的な「アルコール依存症」はよく知られています。

 これだけではなく、アメリカでは「アルコールによる発がん」も注目されています。アルコールが体内で代謝されて生まれるアセトアルデヒドという有害物質が遺伝子に直接作用し、発がんを促進すると考えられています。また、アセトアルデヒドが活性酸素を増やして炎症反応を起こしやすくすること、細胞中のビタミンB6や葉酸など有益な成分を減少させることなども、発がんにつながるリスクファクターです。

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満尾正

満尾正

満尾 正(みつお・ただし) 満尾クリニック院長・医学博士。日本キレーション協会代表。米国先端医療学会理事。日本抗加齢医学会評議員。1957年、横浜生まれ。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、2002年、日本初のキレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを赤坂に開設、2005年、広尾に移転、現在に至る。主な著書に『世界の最新医学が証明した長生きする食事』『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』(アチーブメント出版)、『世界最新の医療データが示す 最強の食事術』(小学館)、『医者が教える「最高の栄養」』(KADOKAWA)など多数。

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