このようなアルコールによる健康リスクを減らすためには飲酒量を減らすことが最善策ですが、アセトアルデヒドを分解する能力には個人差があり、少量の飲酒でも大きく影響を受けてしまう人もいますので、一概に総量だけで語ることはできません。分解能力は遺伝子によって次の3つのタイプに分けられます。

・GG型(酒豪タイプ)=効率よく分解できる

・AG型(中間タイプ)=分解速度が遅い

・AA型(下戸タイプ)=分解能力がない

 下戸の人(AA型)はアルコールが飲めないのでリスクそのものがありません。大量に飲める人(GG型)は、発がんリスクよりもアルコール依存症になるリスクに注意が必要です。発がんリスクに注意しなければならないのは、中間タイプです。少量のアルコールで顔が赤くなるが、お酒を飲む習慣である程度飲めるようになる人(AG型)です。AG型の人は、食道がんや咽頭がんの発生率が最も高いというデータもあります*1。飲めるけれどアセトアルデヒドの分解は遅いので、長時間体内に影響が残るためだと言われています。

 こうして見てみると、健康によい飲酒とは、「自分自身の遺伝子のタイプを知って弊害を防ぎながら、適量を楽しむ」ということに尽きるでしょう。飲酒によって、メンタルストレスを緩和できるなどのメリットも確かにあるのですが、飲み過ぎればデメリットのほうが大きくなります。これはあくまでも個人的な印象ですが、やはり「大酒飲みは長生きしない」ようです。「酒は飲んでも飲まれるな」という先人の言葉にまさるものはなし、ということかもしれません。

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厚労省の節度ある飲酒の量は?