甘いものは緑茶・コーヒーと一緒に

 誰しも疲れたり、落ち込んだりしたときに甘いものを食べることでほっとしたという経験があるのではないでしょうか。甘いものは糖質のかたまりなので決して大いにすすめられるものではないのですが、「スイートメモリー」という言葉があるように、心の栄養のような側面も少なからずあると思います。絶対に食べてはいけないわけではなく、量と頻度をコントロールできることが重要です。

 甘いものを食べるなら、緑茶やコーヒーと一緒に摂ることをおすすめします。緑茶に豊富な苦み成分は「カテキン」と呼ばれるポリフェノールで、糖質の吸収を抑えて血糖値の上昇を緩やかにしてくれることがわかっています。

 また、まだ研究段階ですが、コーヒーにも同じような効果があるのではないかと期待されています。コーヒーはカフェインが多いということが知られていますが、近年の研究で、それ以上にポリフェノールが多いということがわかってきました。クロロゲン酸というコーヒーのポリフェノールは、抗炎症作用、抗酸化作用があり、腸内細菌叢を変化させ糖尿病を予防する、心臓血管疾患を予防するなど、さまざまな健康効果が期待されています。

 コーヒーと同様に、チョコレートにも抗炎症作用があることが確かめられています。これはチョコレートの原料となるカカオに含まれる「テオブロミン」という成分の働きで善玉コレステロールが増え、血管内の修復が進むからではないかと考えられています。チョコレートにはカカオポリフェノールも含まれていますので、同じ甘いものを摂るなら、高カカオチョコレートを優先的に選ぶと健康習慣につながるでしょう。

 ただし、製品選びが重要です。カカオ含有量70%以上の高カカオチョコレートを選ぶこと。また、砂糖や脂肪も多く使われているので、食べ過ぎは禁物です。中にはトランス脂肪酸が含まれているものもあります。甘いものは、品質の良いものを選んで、ほどほどに楽しむようにしましょう。

*1 Functional variants in ADH1B and ALDH2 coupled with alcohol and smoking synergistically enhance esophageal cancer risk. Gastroenterology 137,1768-1775(2009).

*2 Coconut phytocompounds inhibits polyol pathway enzymes: Implication in prevention of microvascular diabetic complications. Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2017 Dec;127:20-24. doi: 10.1016/j.plefa.2017.10.004.

著者プロフィールを見る
満尾正

満尾正

満尾 正(みつお・ただし) 満尾クリニック院長・医学博士。日本キレーション協会代表。米国先端医療学会理事。日本抗加齢医学会評議員。1957年、横浜生まれ。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、2002年、日本初のキレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを赤坂に開設、2005年、広尾に移転、現在に至る。主な著書に『世界の最新医学が証明した長生きする食事』『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』(アチーブメント出版)、『世界最新の医療データが示す 最強の食事術』(小学館)、『医者が教える「最高の栄養」』(KADOKAWA)など多数。

満尾正の記事一覧はこちら