日々の食事に欠かせない油。「悪者」扱いして脂質の摂取を控えてしまう人もいるが、量だけを問題とせず、その種類や性質を理解して摂取すれば過剰に恐れる必要はない。健康に良い油と健康に悪い油、そして医師がおすすめする油とは──。アンチエイジングクリニックを開院した医師・満尾正氏の新著『ハーバードが教える 最高の長寿食』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。
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摂りたい油、避けたい油
油(脂質)の主な構成成分である脂肪酸は、バターやラードなど動物性の脂に含まれている「飽和脂肪酸」と、オリーブオイルや亜麻仁油など植物性の油に含まれている「不飽和脂肪酸」の2種類に大別されます。飽和脂肪酸はさらに短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に分けられ、不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸(オメガ9)と多価不飽和脂肪酸(オメガ3、オメガ6)に分けられます。
これらの油の中には健康に良い油と健康に悪い油があります。加熱しても酸化されにくいという点では、常温で放置すると白く固まるバター、ラード、ヘット(牛脂)、ギー(バターから水分やたんぱく質を除いた油)など飽和脂肪酸に利点があります。
飽和脂肪酸の中でも、ココナッツオイルやMCTオイルなどには中鎖脂肪酸という分子量の小さな脂肪酸が多く含まれ、糖質制限のサポートや脳のコンディションアップに役立つと言われています。