中鎖脂肪酸は、他の脂肪酸と代謝経路が異なり、腸管からすぐに血液中に吸収され、肝臓で代謝されるという特徴があります。肝臓で「ケトン体」と呼ばれる物質に変化し、脳に運ばれて神経細胞のエネルギーになります。そのため、認知症や難治性の脳神経疾患に対してココナッツオイルが有用という報告も増えつつあります。

 他にも、体内の脂肪燃焼を促進する働きがある、空腹感を抑えて食欲を制限するなどの効果も報告されており、糖質制限を行っている人には役立つでしょう。糖質制限を行うとき、体はエネルギー源を糖質から脂質メインへとシフトし、脂質の分解が進みケトン体が作られやすくなりますが、このときココナッツオイルをとれば、さらにケトン体の産生が進みます。

 また、ココナッツオイルには「ラウリン酸」と呼ばれる中鎖脂肪酸の一種が約50%含まれており、これが体内で抗ウイルス成分に変化して天然の抗生物質のような働きをすると言われています。感染症予防や免疫力アップにも役立つ可能性があります。

 ココナッツオイルをキッチンに常備して、炒め物などの加熱調理に利用するほか、カレーやヨーグルトに垂らしたり、コーヒーに小さじ1杯溶かしたりするのもおすすめです。和食には使いにくい印象もありますが、ココナッツの風味を抑えたものもありますので、用途に応じて合う製品を利用しましょう。高温処理された安価なものにはトランス脂肪酸が含まれていることもあるようですので、低温抽出の「エキストラバージン」オイルを選ぶことが大切です。

著者プロフィールを見る
満尾正

満尾正

満尾 正(みつお・ただし) 満尾クリニック院長・医学博士。日本キレーション協会代表。米国先端医療学会理事。日本抗加齢医学会評議員。1957年、横浜生まれ。1982年、北海道大学医学部卒業。内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療に従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、2002年、日本初のキレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを赤坂に開設、2005年、広尾に移転、現在に至る。主な著書に『世界の最新医学が証明した長生きする食事』『食べる投資 ハーバードが教える世界最高の食事術』(アチーブメント出版)、『世界最新の医療データが示す 最強の食事術』(小学館)、『医者が教える「最高の栄養」』(KADOKAWA)など多数。

満尾正の記事一覧はこちら