「不登校の大半は親の責任」。自治体の長から飛び出した発言が、波紋を呼んだ。背景には不登校への「無理解」があると専門家は指摘する。悪いのは誰か──。AERA 2023年12月18日号より。
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不登校の児童生徒が増えている。2022年度に30日以上登校せず「不登校」とされた小中学生は29万9千人と、6年連続で過去最多を更新した。同時に、子どもが不登校になると、親は追い詰められていくことが多い。そんななか、10月、滋賀県東近江市の小椋正清市長が、「不登校の大半は親の責任」などと発言した。これに対し多くの親や関係者から、驚きと怒りの声が上がった。
不登校を巡っては17年、不登校の子どもの支援を目的とする「教育機会確保法」が施行され、不登校になっている本人とその家族が抱える思いに理解を深めることが重要とされた。にもかかわらず、こうした発言が自治体の長から出たのはなぜか。
「自分を責めた」約67%
NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク(全国ネット)」共同代表の中村みちよさんは、小椋市長の発言を「言語道断」と非難し、発言の背景には「無理解」があると指摘する。
「いまだに、『不登校は親の責任』『甘やかし』と考える人が一定数います。そうした人たちは、不登校の親の声を聞いたことがないのだと思います」
教育機会確保法を知っていたとしても、法律ができた背景や親の気持ちを体感として理解できていないのではないかという。
「現場の教員も、親を責めているつもりはなくても、『頑張って学校に連れてきてください』などと働きかけをすることが少なくありません。その結果、親は子どもが不登校になると、自分が悪いと自らを責めることになってしまいます」(中村さん)
全国ネットは昨年10月、不登校の子どもを持つ親にインターネットでアンケートを実施した。574人から回答があり、不登校がきっかけで「親に生じた変化」を選ぶ問い(複数回答)では、「学校や社会への考え方や価値観が変わった」が約83%と最も多かった一方、「自分を責めた」が約67%になった。他にも「孤独感、孤立感」は約53%、「家族との関係が悪くなった」が約26%に上るなど、親自身も追い詰められる状況が明らかになった。