企業のマネジメント問題の中で悩みの中心にあるのが「若手を怒れない、叱れない」問題。怒ることで距離ができてしまうケースも(写真:GettyImages)

 40~50代の上司世代の中には、Z世代と価値観のギャップを感じている人は少なくないだろう。その差を埋めるために、Z世代の働き方や働きがいに対する価値観を紹介する。AERA 2023年12月11日号より。

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 リクルートマネジメントソリューションズHRD統括部主任研究員の桑原正義さんによれば、今、企業のマネジメント問題の中で悩みの中心にあるのが「若手を怒れない、叱れない」問題。怒ることで距離ができてしまい、その後コミュニケーションがとりづらくなるというケースに企業は頭を悩ませている。同研究員の武石美有紀さんが解説する。

「実際にZ世代からは、自分を思って叱ってくれていることは頭ではわかっているが、心がショックを受けて立ち直れなくなってしまうという声もありました。なぜこんな言い方をするのか、自分のことが嫌いなのか、もっと進めばこんな言い方しかできないなんてブラック(企業)だなと捉えられる可能性すらあります」

 上の世代は厳しく指導される経験を経てきたが、現代では家庭でも学校でも厳しい指導を避けるようになってきている。Z世代に対してはなぜ叱るのかの理由も含め説明することが大事なのだという。

無批判の人たちもいる

 ただ、これらがZ世代すべてに当てはまるものではないということは留意しなければいけない。千葉商科大学准教授の常見陽平さんはこう話す。

「これまでの価値観とは異なる『尖(とが)っている』Z世代の人の意見が、世代すべての主張を代弁しているわけではないと思います。SNSが発達して意見を発信できる場が増えたことで、そうした主張を目にしやすくなり、極端な意見が目立っているとも言えます」

 日本においては異議を唱えたり疑問を呈したりする層は2割ほどではないかと見立てる。常見さんは「Z世代の社会問題に対する意識は非常に高い」としつつ、こう指摘する。

「むしろ無批判にごく普通に働いている人のほうが多いのではないでしょうか。社会に対して異議申し立てなんてする余裕もなく、受け入れてしまっていたり、疑問に感じつつもそれを変える手だてはないと考えてしまったり。そうせざるを得なくなってしまっているのが現状だと思います」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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