AERA 2023年12月11日号より

 ただ、働き方について関心を持つ層は以前より増えている。自身がZ世代で、若者世代の政治参加を促す「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子さんは、昨夏の参院選の際、20代を対象に選挙で考えたいテーマについてアンケートを取った。結果は1位が「就職、働き方、労働雇用」だった。今の若者が自分事として一番関心を持つテーマなのだろう。

「私が学生時代に留学したデンマークでは、朝8時半から午後3時半が働く時間で、夕方5時からの政治や社会運動の会議ミーティングには社会人でも参加できました。でも、今の日本の働き方には社会のことを考える時間も余裕もない。週5日フルタイムか非正規雇用かの2択ではなく、週に3日は企業で働き、週2日は自分のやりたいことをやるとか、そういう自由な動き方ができる雇用体系があれば社会は変わっていくと思う」

東日本大震災の経験が

 Z世代の一人として、「働く」ことについての意識の変化があるとすれば「東日本大震災を幼い時に経験したこと」が一つの要因と話す。

「都会で使うエネルギーを地方で作って送って、原発事故が起き、社会が壊れた。この出来事を目の当たりにしたことで、今までの資本主義的な社会は持続可能じゃないよね、不均衡だよねという価値観が出てきた。今までの経済だけを優先していくのは幸せとは少しずれていると。だから、かつての『ジャパン・アズ・ナンバーワン』をもう一度、みたいな熱量は湧いてこないし、その必要性も感じない。それぞれが幸せになれることを考えればそれでいいと感じているのではないでしょうか」

 組織よりも個。自分らしくいられるかどうかをZ世代は優先し、幸福を追求する。常見さんは指摘する。

「自分が何をするかよりも自分がどうありたいか。『do』よりも『be』なんです。仕事かプライベートかなんて今や愚問です。そもそもそういう物差しで考えていない。今までの指標では働き方や働きがいを説明できなくなっているし、むしろ働きがいをどこに見いだせばいいか戸惑っているのは上の世代なのではないでしょうか」

 Z世代の新しい価値観は、働く全世代にヒントを与えてくれる。迎合も拒否もなく、フラットに「働き方」「働きがい」を見つめ直す機会になるかもしれない。(編集部・秦正理)

AERA 2023年12月11日号より抜粋

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