会社は別ですが同じく新入社員だった当時の私は、まだ到底結婚や妊娠は想像もできず、羨ましいという感情は皆無で、むしろ似たような生活を送り、一緒に遊んでいた彼女が一旦離脱することをただ寂しいとしか思いませんでした。若い時は、新人研修を抜けたら、絶対まともな仕事につけてもらえないだろうと安易に思いもしました。ただ、今になって彼女はなんて先見の明があり、賢かったのだろうと感じます。周囲の友人たちにとって現実的ではなかった結婚や出産を、さっさと済ませ、十年ほどは希望の部署ではないところで時短勤務をしていましたが、三十代前半で戦線復帰し、周囲が焦って婚活したり不妊治療に多額のお金と膨大な時間を使ったりしている頃には完全に復帰して誰よりも自由に働き、また恋愛もしています。

 私は会社に内定している時に一度中絶手術を経験したのですが、当時は出産するなんていう選択肢は一瞬も脳裏をよぎらず、何かを選択した気分ですらありませんでした。しかしその友人の娘が中学生になり、彼女のキャリアが私と比べても何一つ劣ることがないのを見ると、そして大人になってみるとあの時の新人研修って新人たちにとっては大事でも社会にとってはマジで無駄な期間だったことに気づくと、どうしてせめて数時間でもいいから悩まなかったのかと若い自分に説教したい気分です。そして当時は思わなかったけれど、今は心から中学生の娘と暮らす彼女を羨ましいと思います。

 今、家事や育児に追われ、夫に比べると仕事にかけられる時間や体力には大きな制限があり、自分の好きなことにお金はかけられず、キャリアは中断中、きっとあなたより実力や情熱がない人があなたのしたいような仕事を手に入れていて、焦る気持ちもひたすら大変な気持ちもあると思います。今どんな人が羨ましいですか? その人の十年後もやはり羨ましいと思えそうですか? 逆にあなたのことを羨ましがる人はどんな人だと思いますか?

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「時には誰かと比べたい~♪」