10月下旬、大久保浩之社長の案内でCoo&RIKUのグループ会社「大浩商事」が営む千葉県内の繁殖場を取材した。最初は約580匹の繁殖犬がいる横芝光町の施設。もともと別の繁殖業者の施設だったものを買い取って改修し、2017年から同社が運営している。(撮影/太田匡彦)

 ペットショップチェーン最大手「Coo&RIKU」が、SNSに「クーリクは非常に悪質なペットショップで有名です」などと投稿した東京都内の女性(43)に対し、名誉が傷つけられたとして損害賠償を求める訴訟を起こしている。同社は「行きすぎた意見を放置せず」という方針で、ほかにも10件以上の開示請求を行っているという。「毅然とした対応をしなければ、誤解が既成事実になってしまう」とするが、法廷における陳述などには、同社のビジネスのあり方に疑義を抱かせるような内容もあった。一部週刊誌やネットニュースで、同社の飼育環境などを問題視する報道も出始めている。Coo&RIKUのビジネスの実態を、大久保浩之社長に取材した。

【写真】Coo&RIKUの繁殖場。メスは約470匹いるという

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会議室の壁一面に防犯カメラ

 東京・秋葉原で「最も坪単価が安い」(同社幹部)という築50年を超える雑居ビルに、Coo&RIKUの本社は入っている。会議室を兼ねた一室に案内されるとまず目に入るのは、壁一面を覆い尽くすように何十台も取り付けられた防犯カメラのモニター画面。各地の店舗内の様子が映し出されている。「何かと物騒なことも多いので、防犯目的で付けています」と大久保氏は説明する。

 なぜ名誉毀損訴訟に乗り出したのか――。大久保氏はその背景を、「やはりアニマル桃太郎さんの一件からです」と切り出した。「アニマル桃太郎」とは2021年秋、経営者が動物愛護法違反(虐待)の疑いで長野県警に逮捕、起訴された同県松本市内の繁殖業者。約1千匹もの犬を虐待的な飼育環境に置き、無麻酔で帝王切開を行っていたことなども発覚した。Coo&RIKUををはじめ多くのペットショップチェーンが、アニマル桃太郎が繁殖した犬を仕入れ、販売していたことも後に明らかになっている。【以下、( )内は筆者による補足や注釈】

大久保 ペット業界の様々なリスクが顕在化した事件でした。同時に、SNS上に誤解の度合いがすぎるような投稿がされるようになった。放っておけば、誤解が既成事実化してしまう。2年ほど前から方針を変え、毅然とした対応をすることにしました。投稿者の発信者情報を開示請求し、その方とやり取りをする。示談がほとんどです。名誉毀損訴訟にまで至ったのは今回の1件のみです。

Coo&RIKU公式サイトから
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大久保社長が強調する「リスク」とは