アニマル桃太郎事件で顕在化したリスクとして大久保氏が強調するのは、ペットショップが犬猫を仕入れるために利用するペットオークション(競り市)の問題だ。ペットショップが効率よく子犬・子猫を仕入れられる場として30~40年前に登場した。繁殖業者が子犬・子猫を出品し、ペットショップのバイヤーが落札する。今では全国に31のオークションがあり(22年4月1日現在)、日々数百匹単位で子犬・子猫が取引されている。

大久保 年間の販売数はだいたい5万匹。オークション経由の仕入れは直近では29%(8月)で、1年通してみれば35%くらい。10年前には85~90%がオークションからでしたが、アニマル桃太郎さんの問題が表面化して半年後くらいから、オークションでの取引をしぼり始めました。そのためブリーダーさんからの直接買い取りは40~45%、(自社グループの)繁殖場からが残りの25%くらいになります。

母犬が出産し、子育てをする「産室」。メスは約470匹いて、月100~150匹の子犬が生まれるという。(撮影/太田匡彦)

オークションのデメリットとは

 オークションにはメリットとデメリットがあります。デメリットをどう消すかという課題に、アニマル桃太郎さんの一件が起きて直面した。デメリットは、ブリーダーさんとのコミュニケーションが取りにくい、ということです。アニマル桃太郎さんがどういう状況なのか、全くわからない状態で取引してこざるを得なかった。

 買い手と売り手から手数料を取るオークションの役割は、僕らバイヤーの立場からすると「安心して購入できるようにする」ということ。その役割が、果たされていないところがあった。僕も長くビジネスをしてきて、ルールを守らないブリーダーさんが一定数いることは知っている。今のままでは第二、第三(のアニマル桃太郎)が出てくる可能性があるのではないかと考えました。

 一方で、Coo&RIKUが起こした名誉毀損訴訟では、同社のコンプライアンス担当者が「(オークションに)そのペットを出荷した業者がどこかということはほとんど重視されません」「バイヤーは出品されたペットの種類と個性、金額を重視して入札を行います」などと陳述する場面があった。ペットショップチェーンでは普通、オークションで仕入れた子犬・子猫の健康状態などを繁殖業者名とひもづけてデータベース化し、オークションで落札する際に繁殖業者を選別するのに利用している。この陳述内容には、疑問を抱かざるを得ない。事実であるなら、企業としてあまりに無責任な姿勢でもある。

大久保 チェックはしています。明確な社内ルールがある。たとえば(仕入れた子犬・子から)パルボウイルスが出た場合、内容によっては半永久的に取引停止にします。絶対的な安全確認が取れるまで、取引は再開しません。安全確認が取れても、取引再開までには最短でも半年は間をあけます。そういう「ブラックリスト」を作っています。実際に取引が再開する事例は、極端に少ないですね。

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