小型犬用の犬舎には、2段重ねでケージが置かれていた。撮影のために扉を開けてもらうと犬たちが一斉に吠えたて、会話ができないほどだった。大久保氏は「慣れた従業員が立ち入る際は、犬たちは驚くほど落ち着いている」と説明した。(撮影/太田匡彦)

大久保 僕らの利益は、ブリーダーさんを管理できる、コミュニケーションが取れるというところ。あともう一点は、オークションの手数料です。手数料は安いところで(落札価格の)5%、高いところで8%をブリーダーさんと、バイヤーの双方から取る。年間では億円単位の経費がかかる。直接取引に切り替えていけば、オークションに支払う手数料部分の経費がなくなるわけです。

 ただブリーダーさんから見ると(販売数が少ないので)、直接取引にそこまでのメリットは感じられない。そこで僕らは、ブリーダーさんがたとえば10頭(直接取引で)出してくれたら、15キロのペットフードを無料でお渡ししている。これはフォローアップという意味でもやっていて、うちのフードを買ってくれるようになれば、(繁殖の現場において)ペットフードの統一化がはかれる。犬はちょっとしたストレスで食べなくなったり、フードを変えると食べなかったり、食欲が意外に安定しない。そのとき、フードを統一化できていると、食べなくなった理由の中から「ペットフードの変更」という選択肢が消せる。

 Coo&RIKUは全国各地に、グループ会社が運営する繁殖場も持っている。これらの繁殖場を巡っては一部週刊誌やネットニュースで「劣悪飼育」問題が追及されているが、そもそもペットショップチェーンが自ら繁殖業を営むメリットはあまりない。いつごろから、なぜ、自ら繁殖場を運用することになったのか。

小型犬用の運動場。運動場はあちこちに用意されていて、すべてあわせると計約800平方メートルあるという。繁殖犬にはすべて名前がついていて、「命名はスタッフのインスピレーション」(大久保氏)(撮影/太田匡彦)

大久保 小さな規模では7、8年前くらいでしょうか。100頭いるかいないかでスタートしました。そもそも僕がこの業界に入ったのはブリーダーになりたかったから。一定程度、僕も犬が好きなので。周りからはそう思われていないと、今は思っていますけど。やはり小さい子が生まれるという喜び、楽しみというのが想像としてあって、商いとしてではなくて趣味の一環として、開始させていただいた。

自社繁殖して情報開示を進める

 そこから、ブリーディング業に本格的に投資をし始めました。今はスーパーの野菜ですら生産者の写真などを掲示する。にもかかわらず何万円もする犬やは、非表示になっている。不思議でならなかったんです。ただその情報開示の「壁」を突破するより、自分たちで繁殖して情報開示を進めていくほうが、お客様に対してより「見える化」できると感じていた。だから、そこに向けて投資をし始めた。それがちょうど5年前くらいです。

 現在、全国に犬猫あわせて11カ所の繁殖場があります。(出産数は)月によって変わるんですが、(Coo&RIKU全体の販売数に占める自社繁殖場からの)割合は25%ですから、だいたい月間4千頭販売するうちの1千頭弱くらいになります。それに対して繁殖用の犬猫は、引退させた犬猫や未稼働の犬猫(1歳未満で繁殖場に入るが、すぐには交配に使わない)もいて、そういうのも含めて計約3500頭になります。

大型犬用の犬舎。ミストが吹き出す設備が備えられていて、夏場に気温があがるなどした際に利用しているという。(撮影/太田匡彦)
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